広島銀行、住宅ローン仮審査の入力作業をDX化 AIとRPAで年間2380時間を削減

2025年6月25日、AI insideは、広島銀行が住宅ローン仮審査業務にAI-OCR(AI型光学文字認識)とRPAを導入し、1件あたりのデータ入力時間を67%短縮したと発表した。
紙中心の手続きに変革をもたらすDX事例として注目されている。
仮審査の紙対応をAIが効率化 13拠点の業務を集約し大幅削減
広島銀行は、AI insideが提供するAI-OCRプラットフォーム「DX Suite」とロボティックプロセスオートメーション(RPA)を活用し、住宅ローン仮審査業務の大幅な効率化を実現した。これにより、データ入力にかかる時間を従来の約25分から8分に短縮し、削減率は67%に達した。
DX Suiteは、紙書類や手書き文字を高精度で読み取り、デジタルデータとして自動変換するAI型の文字認識ツールである。従来のOCRよりも認識精度が高く、帳票のレイアウトや記述の揺らぎにも対応できる点が特徴だ。
同行では年間約1万2000件の住宅ローン仮審査を受け付けており、そのうち約7割は依然として紙による申し込みだった。担当者はファクスで届いた申込書を手作業でシステムに入力し、2名体制での確認を行っていたため、業務負荷が高かった。
DX Suiteの導入により、RPAと連携した自動入力が可能となり、年間で約2380時間の削減を達成。13拠点に分散していた処理業務を集約し、人的リソースをローン相談や提案などの本来業務へとシフトできる環境が整備された。
広島銀行総合企画部企画室は、「当行の戦略ドライバーの1つであるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進で、DX Suiteの導入が業務改革の具体的な成功事例になった」と述べ、今後は住宅ローン以外の紙業務にもデジタル化を拡大していく方針を明らかにしている。
紙文化と向き合うDX 成功の鍵は現場定着と拡張性に
今回のDX事例により得られた主な成果は、担当者が定型作業から解放され、顧客対応や提案業務といった付加価値の高い活動により多くの時間を充てられるようになった点である。業務の集中化により、人的コストの最適化や処理精度の向上も見込まれる。
一方で、紙文化が根強く残る銀行業務において、AI-OCRやRPAの導入はシステム整備だけでなく、現場の運用ルールや習慣への定着が重要となる。
特に申込書フォーマットのばらつきや読み取り精度に関する課題は、今後の継続的な改善が求められる領域である。
ただし、今回の導入実績をもとに、住宅ローン以外の融資・申込手続きにも展開が進めば、全行的な業務改革が加速する可能性は高い。
広島銀行は「紙とデジタルが混在する現実的な環境において最適な形でのDXを推進していく」としており、この方針は同様の課題を抱える地方銀行や金融機関にとっても、現実解となり得るモデルケースだと言える。