AIが業務時間の過多を改革 Microsoftが新しい働き方を提案

米国時間2025年6月17日、Microsoftは「就業日が終わらない」現象に着目したレポートを公開した。
自社製品の利用データを分析し、業務負荷の実態とAIを活用した対処法を提示。
従業員の疲弊を防ぐ次なる働き方を提案した。
Microsoft、就業日の“無限化”に警鐘
Microsoftは17日のレポート「Breaking down the infinite workday」において、就業時間の過度な拡大が多くの従業員にストレスを与えていると指摘した。
Microsoft 365(Outlook、Teams、Office等)の匿名化利用データをもとに、業務開始は朝6時、終了は夜10時以降、さらには週末にも及ぶ「終わらぬ就業日」が常態化している実態を明らかにした。
具体的には、平均的な従業員は1日117通のメールを受信し、Teamsでは154通のメッセージを受け取る。
生産性の高まる午前9〜11時と午後1〜3時には会議が集中し、深い作業時間の確保が困難になっている現状があるという。
さらに、約57%の会議は事前招待なしに設定され、65人以上が参加する大規模会議も急増。
午後8時以降の会議は前年比16%増、週末も2割の従業員がメールをチェックしており、リモート・ハイブリッドワーク環境が境界を曖昧にしている現状が浮き彫りとなった。
このような就業形態は、単に従業員の疲労や燃え尽きを引き起こすだけでなく、業務の生産性そのものを阻害しているとMicrosoftは警告する。
その対策として、レポートではAIエージェントの活用が推奨されている。
ルーチン業務や報告書作成などの低付加価値作業をAIに委ね、従業員が創造性を発揮できる時間を確保すべきだと提案した。
一例として、3体のAIエージェントを調査、分析、レポート草稿に振り分けて活用するケースが紹介された。
さらに、組織図を使って機械的に役割を割り振るのではなく、特定の目標に基づいてチーム編成する「作業図」への転換も併せて推奨されている。
作業図を起こして足りない部分をAIで補うことで、従業員がよりタスクに集中できるという。
AIによる働き方の改革
Microsoftの提言は、AIを活用することで従業員の時間を「再配分」し、働き方そのものの質を変えようとする意欲的な試みであるといえる。
20%の作業が成果の80%を生むという「パレートの法則」に従い、優先度の低いタスクをAIに任せることで、創造的・戦略的な思考に集中する時間を捻出できる。
ただし、AI導入だけでは、仕事量と、公私がはっきり分かれていないという問題は解決しないだろう。
既存の働き方のリズムを見直さなければ、AIはむしろ「壊れたシステムをさらに悪化させてしまうリスクがある」とMicrosoftも警鐘を鳴らしている。
AI導入には学習コストと適切な再設計が不可欠であり、特に会議文化やチーム編成といった構造的課題へのアプローチが求められる。
AIの恩恵を最大化するには、ツール導入以上に、組織全体の意思決定構造の刷新がカギとなるだろう。
参考:「Breaking down the infinite workday」(マイクロソフト公式)
https://www.microsoft.com/en-us/worklab/work-trend-index/breaking-down-infinite-workday