名古屋市がAI活用で水道管交換を効率化へ 漏水リスクを可視化し年間100km超の作業を最適化

名古屋市議会がAIを用いた老朽水道管の交換作業を検討していることが、2025年6月24日の報道により明らかになった。全国的な先行事例を参考に、効率化と災害対策の両立を目指す構えだ。
名古屋市、水道管交換にAI導入を検討開始
今回の名古屋市議会では、老朽化が進む水道管の交換作業にAI技術を取り入れる方針が議題となった。議場では自民党の久津屋利枝市議が、効率性と効果を高める手段として最新技術の活用を積極的に推進すべきと訴えた。
背景には、老朽管の破損による冠水や漏水が市内各地で頻発している現状がある。
水道管の交換には莫大な時間と予算がかかることがネックとなっており、作業の優先順位やリスク評価が課題となってきた。
すでに仙台市や福岡市では、過去の破損履歴や土壌環境などのビッグデータをAIが解析し、管路ごとの漏水リスクを算出するシステムを導入している。これにより、高リスクな箇所から順に効率的な更新が可能になっている。
名古屋市も年間約100kmの交換実績を持つが、今後はこれにAIの分析結果を加味し、さらに作業効率を高める体制構築に乗り出す見通しである。
AI導入でコスト削減と防災強化も 期待と課題が交錯
AIによる水道管交換の最適化には、作業の効率化だけでなく、長期的なコスト削減という利点がある。高リスク箇所を優先的に抽出することで、無駄な交換を避け、限られた予算の有効活用が可能になるだろう。
また、地震時に被害が出やすい老朽管の早期特定にもつながるため、防災面でも大きな意義がある。災害時のライフライン確保という観点からも、自治体のインフラ戦略における重要性が増している。
一方で、AI導入には初期投資やデータ整備の手間といった課題も存在する。
過去の管路データや地盤情報を統合し、精度の高い解析環境を整えるには一定の時間と人材リソースが必要になると思われる。
今後は、他都市との連携による技術共有や、国の補助制度の活用が成功の鍵となる可能性がある。全国の自治体におけるモデルケースとして、名古屋市の取り組みは注目を集めることになりそうだ。