ゆうちょ銀行、生成AI悪用の偽動画に警鐘 「口座利用停止」は誤情報と明言

2025年6月23日、ゆうちょ銀行はYouTube上で拡散中の偽情報動画について公式に注意を呼びかけた。生成AIによる合成音声や画像を用い、「7月から口座が使えなくなる」といった誤情報を含む動画が確認されている。同社は、7月以降も全ての商品・サービスは通常通り利用可能と明言した。
YouTubeで拡散、口座停止を装う偽動画に注意喚起
ゆうちょ銀行は6月23日、YouTube上に「7月からゆうちょ銀行とJAバンクの口座の利用ルールが変わる」とする複数の動画が投稿されていることを受け、事実無根の情報であると公式に否定した。
これらの動画は「預金保険制度の限度額が変わる」「あなたの大切なお金がどうなるか分からない」などとし、不安を煽る内容となっている。
問題の動画は6月19日ごろから急増し、一部は再生回数が20万回を超えている。特に「65歳以上」という文言を強調することで、高齢者層をターゲットにしているとみられる。
再生数を狙った悪質な誘導の可能性があり、視聴者に誤った印象を与える構成となっている。
動画の多くには、文字の崩れた画像や不自然なイントネーションの音声が含まれており、AI生成による合成コンテンツである可能性が高い。
これに先立ち、同様の手法で「高齢者のバス料金が全国無料になる」といった虚偽情報を流す動画も確認されており、福岡市や仙台市が公式に注意喚起している。
今回の口座情報と同様に、信ぴょう性のあるテーマを装い、不安を誘発する内容が繰り返し投稿されているのが特徴だ。
生成AIによる偽情報の拡散リスク 見極める力が問われる時代に
今回の事案は、生成AI技術が悪用されることで、視聴者が本物と信じ込みやすい“偽情報”が短時間で大量に拡散される危険性を示している。合成音声やAI画像により、従来よりも巧妙な手口が可能になっており、視聴者自身が情報の真偽を見極める力を求められる場面が増えている。
偽動画のターゲットが高齢者層である点も深刻だ。情報リテラシーに差がある中で、不安を煽る動画を信じて行動するケースが増えれば、経済的被害や不必要な手続きの発生などの実害にもつながりかねない。
今後、YouTubeなどのプラットフォーム側にも、AI生成コンテンツの監視強化や誤情報対策が求められるだろう。
情報が瞬時に拡散される現代において、公的機関や企業の発表を必ず確認することが、フェイクに踊らされないための最低限の防御手段である。生成AIの進化とともに、私たちの情報リテラシーもまた問われる時代が来ている。