TOPPAN、生成AI活用の「デジタル分身サービス」を開始 本人そっくりの対話体験を実現

2025年6月20日、TOPPAN株式会社は、人物の姿や声、知識・話し方までを再現し、本人と対話するような体験ができる「デジタル分身サービス」を提供開始した。
国内開発のAI技術と映像再現技術を融合し、企業のマーケティングや知識継承を支援する。
TOPPAN、本人再現型のAI分身サービスを本格提供開始
TOPPANは、人物の容姿・音声・知識をリアルに再現し、本人のような対話を可能にする「デジタル分身サービス」の提供を開始した。
生成AIと同社の高精度な再現技術を融合させたこのサービスは、少子高齢化や情報伝達手段の多様化を背景にしており、知識継承やマーケティングの新手法として期待されているという。
具体的なサービス内容としては、本人の顔・表情・動きをリアルに再現する映像生成に加え、音声サンプルを用いて声色・声質を忠実に再現する。スタジオ収録に加えて、スマホアプリによる収録にも対応しており、多言語発話も可能だ。
これにより、本人が話せない言語でも“本人の声”でグローバルなメッセージ発信が可能となる。
さらに、TOPPANのデータ構造化技術を活かして、本人に関するテキストや動画、画像などをAIに学習させることで、知識や経験に基づいた対話を実現できる。
話し方や口癖も反映され、自然な対話体験を提供する。
想定される活用シーンとしては、営業商談や顧客対応、経営理念の継承、教育・文化分野での知見伝承、エンタメ領域でのファンサービスなどがある。
また、複数のユーザーとの同時対話や、本人不在時の代替応対など、業務効率化への貢献も期待されている。
価格は、メッセージ型動画が150万円から、対話型アバターが500万円から。真正性を証明する基盤「AVATECT」との連携も予定されており、2027年度末までに10億円規模の売上を目指す。
人材不足と継承課題に挑む革新技術 実用化には高い技術要件も
本サービスの導入によって、時間や場所の制約を超えた新たな知識継承・対話手段が生まれつつある。とりわけ、トップセールスの営業手法や経営者のビジョンの再現、引退した文化人の知見継承など、人の思考と表現を長期的に活かした新しい可能性が提示されているといえる。
多言語対応機能は、グローバルな情報発信・研修・教育用途において大きな価値を持つだろう。また、エンタメや接客業務など、対話体験そのものに価値がある領域での活用余地も広いと思われる。
一方で、分身が本当に「本人らしく」機能するためには、膨大な個人データを正確に構造化し、AIに適切に学習させる必要がある。このプロセスには専門的な知識と高度な技術が不可欠であり、導入には一定のハードルがあるのも事実だ。
ただし、TOPPANは音声・映像再現やデータ管理の分野で長年蓄積したノウハウを持ち、真正性の担保にも注力している点が強みだ。
将来的には、業界ごとのカスタマイズやテンプレート化が進むことで、より幅広い業種・用途での普及が期待できる。