TDKが米QEIのRF電源事業を買収 半導体製造装置市場で存在感を強化へ

2025年6月20日、TDKが米国のQEIコーポレーションのRF電源ビジネス関連資産を買収したと発表した。今後、半導体製造装置向けの製品群を拡充し、グローバル市場での競争力を高める狙いがある。
TDK、QEIのRF電源資産を取得し製造装置分野を拡大
今回の買収により、TDKは半導体製造プロセスに用いられるRF電源装置(※)とインピーダンスマッチング装置の技術を自社に取り込んだ。QEIは、プラズマプロセス用の高周波電源において高い専門性を有しており、成膜やエッチングといった工程に対応した製品を展開している。
TDKはもともと直流電源装置で一定の市場シェアを持っていたが、今回のRF分野の技術取得により、製品ポートフォリオの広がりと競争優位性の強化を図る方針だ。従来の製品に加え、より高度な半導体製造ニーズに対応する体制を整えることになる。
背景には、AIやIoT、EV、データセンターといった分野における半導体需要の爆発的増加がある。製造精度と信頼性が要求される中、RF電源の役割が重要性を増しており、TDKとしても戦略的領域と位置づけている。
TDKラムダアメリカスのジェフ・ボイラン社長は「QEIの半導体プラズマ用途向け電源ソリューションと、当社の直流電源装置を組み合わせることで、10億米ドルを超えるとされるRF電源市場への参入が可能となる」とし、グローバルな販売・サポートネットワークを活かして拡販を目指すと語った。
※RF電源装置:Radio Frequency(高周波)を用いて半導体製造工程のプラズマを生成・制御するための電源機器。成膜やエッチングなどの微細加工工程に用いられる。
半導体市場の変化に先手 TDKの狙いと課題とは
今回の買収によってTDKは、従来の直流電源に加えてRF電源を手中に収め、より包括的な電源ソリューションを提供できる体制を整えた。これにより、装置メーカーへの提案力が高まり、顧客との関係強化につながる可能性がある。
一方で、新技術の取り込みには人材の定着と知見の融合が不可欠となる。QEIから引き継ぐエンジニアリング資産を、TDKグループ内で有効に活用するには、組織間のシナジー創出が鍵を握るだろう。
また、半導体製造装置市場は技術革新のスピードが非常に速く、製品開発や顧客ニーズへの迅速な対応が求められる。RF電源分野で競合他社に後れを取らないためには、買収後の製品改良とサポート体制の整備が急務である。
今後、AI関連市場の拡大とともに、高度なプロセス制御を可能にする電源技術への需要はますます高まる見通しだ。TDKがRF領域でのプレゼンスを確立できれば、AIエコシステム全体への影響力も飛躍的に拡大することが期待される。