暗号資産が「証券」扱いに近づく可能性 金融庁、金商法移行に向けた結論提示へ

2025年6月25日、日本の金融庁は金融審議会総会で暗号資産の規制を巡る方針を示す見通しだ。金商法適用への移行が進めば、税制や商品設計にも大きな影響を及ぼすことになる。
暗号資産、金商法移行へ議論本格化 金融庁が新制度の枠組み提示か
今回の金融審議会総会で注目されているのは、暗号資産の規制を現行の資金決済法から金融商品取引法(金商法 ※1)へと移行させる構想である。金融庁は議論の進展を受け、制度設計に関する一定の方向性を提示するとみられている。
この動きの背景には、自民党のweb3ワーキンググループ(WG)が2025年3月に公表した制度改正案がある。そこでは、暗号資産の特性を踏まえたうえで金商法上に新たなカテゴリを設けるという提言が盛り込まれていた。
単なる有価証券と同等の扱いにとどまらず、暗号資産固有の機能に対応した独自の法的位置づけを模索する動きだ。
また、金融庁が同年4月に発表したディスカッション・ペーパーでは、暗号資産が抱える課題は「伝統的に金商法が対処してきた問題と親和性がある」との見解が示され、実質的に法体系の再編に前向きな姿勢が打ち出された。
同ペーパーでは資金調達機能の有無によって暗号資産を分類し、それぞれに応じた規制を設計する方針も提示されている。
さらに、同年1月には加藤財務大臣が暗号資産の制度検証の目処は「6月末」と明言しており、今回の総会がその集大成となる可能性が高い。
実際に金商法移行が明確になれば、国内の暗号資産ビジネスにとって制度的な転換点となる。
※1 金融商品取引法(金商法):証券取引などを規制・監督する日本の法律。投資家保護や公正な市場の確保が目的。
税制・商品開発に変化も 金商法移行がもたらす期待と課題
暗号資産が金商法の対象となれば、まず期待されるのは税制の一体化である。これまで総合課税対象だった暗号資産の利益が、株式や投資信託と同様に20%の申告分離課税(※2)へと移行する可能性がある。これにより、個人投資家の負担軽減と市場参加の促進が見込まれる。
また、金商法への統合によって、暗号資産に連動するETF(上場投資信託)の設計が現実味を帯びる。米国ではすでにビットコインETFが承認されており、日本でも同様の動きが加速すれば、機関投資家の参入拡大や市場の安定化に寄与する可能性がある。
一方で、金商法に基づく厳格な情報開示義務や販売規制が課されることにより、中小規模の暗号資産発行体にとってはコストや法務面での負担が増すという側面もある。
法令対応のハードルが上がることで、新規プロジェクトの立ち上げが鈍化する懸念も無視できない。
さらに、暗号資産の技術的・機能的な多様性に金商法の枠組みがどこまで対応可能かという課題も残る。
金融庁は類型化による柔軟な適用を模索しているが、実際の制度運用にあたっては、業界との調整や継続的なアップデートが不可欠となるだろう。
※2 申告分離課税:特定の所得を他の所得と分けて申告し、一定の税率で課税される制度。