テキサス州がビットコインを恒久準備金に 仮想通貨を巡る新たな州戦略が始動

2025年6月20日、米テキサス州のグレッグ・アボット知事は同州が戦略的に保有するビットコインの恒久準備金化を図る新法案「HB4488」に署名した。
一方で、より包括的な準備金設立法案「SB21」には署名しなかったが、州憲法の規定により自動成立する見通しである。
ビットコイン恒久基金法に知事が署名 準備金制度を正式保護へ
テキサス州では2025年6月20日、アボット知事が「ビットコイン準備金保護法案(HB4488)(※)」に署名した。
この法案は今後設立が予定されている「テキサス戦略的ビットコイン準備金」を対象にしており、その資産を州の財産として長期的に保持・運用することを目的としている。
州財政における新たな資産分散手段として、ビットコインの国家的保有に道を開く内容である。
一方、より注目を集めていた「準備金設立法案(SB21)」には、アボット知事は署名を行わなかった。しかし、署名期限の6月22日をもって自動成立する見込みとなっている。
同法案はすでに州上院で24対7の賛成多数で可決されており、施行はほぼ確実視されている。
SB21の中核は州が戦略的に仮想通貨、特にビットコインへの直接投資を行うことである。時価総額5,000億ドル以上の仮想通貨への州予算投資を認め、初期の投資額は数千万ドル規模に達すると見られている。
運用管理は、州会計監査官と戦略的ビットコイン準備金諮問委員会が担当する。
※戦略的ビットコイン準備金:州が自国通貨や金などと並ぶ戦略的資産として仮想通貨を保有するために設立される基金のこと。
ビットコイン保有の影響と展望
テキサス州が仮想通貨を公的資産として保有する方針に舵を切ったことは、全米のみならず、世界のビットコイン市場においても注目できる動きである。
これにより同州は、ニューハンプシャー、アリゾナに続く全米で3番目のビットコイン保有州となる見込みだ。
テキサス州は仮想通貨フレンドリーな環境として知られており、ビットコインマイナーの多くが同州に拠点を構えている。準備金制度の整備は、仮想通貨エコシステムの強化にもつながると考えられる。
具体的なメリットとしては、インフレやドル価値の下落リスクに対する資産ヘッジ、ならびに州財政の柔軟性強化が挙げられる。
国家や州が金の代替として仮想通貨を保有する動きは、これまでエルサルバドルなど一部の国に限られていたが、今回のテキサス州の動きは先進経済圏における重要な前例となるだろう。
一方で、ボラティリティの高いビットコインを公的資産として保有することにはリスクも伴う。市場変動によって準備金評価額が短期間で大きく上下する可能性があるため、運用には高度なリスク管理と透明性が求められる。
今後、他州や他国がこの動きにどう追随するかによって、ビットコインの制度的地位はさらに拡大していく可能性がある。準備金としての仮想通貨保有が「例外」から「戦略」に転換する時代が、いよいよ到来したと言える。