東京都の熱中症対策が一新 「東京暑さマップ」1km単位で暑さ指数を可視化

2025年6月20日、日本気象協会は東京都と共同で「東京暑さマップ」を公開した。都内全域の暑さ指数を1時間ごとに1kmメッシュで確認できる新ツールで、熱中症リスクの可視化と対策の精度向上が期待される。
東京全域の暑さ指数を1時間ごとに可視化する新マップを公開
今回の「東京暑さマップ」は、東京都と日本気象協会が連携して開発したもので、都民や事業者が熱中症のリスクをより正確に把握できるよう設計されている。都内全域を1km四方のメッシュに分割し、暑さ指数(WBGT近似値)を1時間ごとに48時間先まで確認できるのが特徴だ。
暑さ指数には、気温や湿度、風速、日射量といった気象要素が使われ、熱中症の危険度を的確に表現する。マップではさらに、1日単位の予測として7日先までの指数も閲覧可能で、長期的な行動計画やイベント運営時の対策にも役立つ。
背景には、猛暑による健康被害の深刻化がある。2024年の5月から9月にかけて、都内で熱中症により救急搬送された人数は8,100人に達し、統計開始以来で最多を記録した。特に高齢者や屋外労働者など、リスクが高い層にとって、細分化された暑さ情報の提供は切実な課題となっている。
このマップはPCやスマートフォンから無料で閲覧可能であり、一般市民だけでなく、自治体や医療機関、企業の安全衛生活動にも幅広く活用が見込まれる。
リアルタイム気象データで熱中症対策が高度化へ 課題は定着と周知
「東京暑さマップ」がもたらす最大のメリットは、熱中症リスクに対する“点”での予測から“面”での対策へ移行できる点にある。通勤ルートや屋外イベント会場、学校の校庭など、具体的な地点ごとの状況を1km単位で把握できることは、個人の判断を助けるだけでなく、組織的な対応の高度化にもつながる。
また、事前に暑さのピーク時間帯や地域を把握することで、冷房の計画的運用や作業スケジュールの調整といった省エネにも効果を発揮する。電力需給ひっ迫の懸念が高まる中で、こうした情報の活用はエネルギー政策との親和性も高い。
一方で、ツールの効果を最大化するには利用の定着が不可欠だ。閲覧率や利用者数が伸び悩めば、的確なリスク回避には結びつかない。特に高齢者やデジタルに不慣れな層への周知手段には工夫が求められる。
今後は、他の自治体や企業との連携による利便性の向上が鍵を握る。例えば、公共交通機関のアプリとの統合や、スマートウォッチとの連携によるリアルタイム通知など、利活用の幅を広げることで、東京都モデルの全国展開も現実味を帯びてくるだろう。