台湾の輸出受注がAI需要で急伸 米国からの注文が大幅に増加

2025年6月20日、台湾経済部が発表した5月の輸出受注額は579億3000万ドルとなり、前年同月比で18.5%増加した。主因はAI関連製品の需要拡大とみられ、米国からの受注は40.1%増と大幅な伸びを示した。
AIと高性能コンピューティングが輸出受注を牽引
5月の台湾輸出受注は前年同月比18.5%増の579億3000万ドルに達し、4カ月連続で前年を上回った。これはアナリスト予想の18.9%増とほぼ一致する結果であった。
主なけん引役は人工知能(AI)や高性能コンピューティング(HPC)分野の需要拡大である。特に通信関連製品の受注は29.5%増、電子製品も27.7%増と、ハイテク領域が大きく寄与した。
また、米国による関税政策を見越した前倒しの発注も影響したとみられる。
地域別では米国からの受注が前月の30.3%増からさらに伸び、40.1%増となった。
一方、中国からの受注は2.4%減に転じ、地政学的な緊張の影響が垣間見える結果となった。
経済部は声明で「貿易政策や地政学的リスクなどの不確実性が今後も世界経済と貿易の成長の勢いを阻害するだろう」としつつも、今の受注増はAI技術の波に支えられていると分析している。
AIバブルの追い風と地政学リスクが同居する今後
台湾経済部は6月の輸出受注について前年同月比16.3~20.7%の増加を予測しており、AI関連製品への強い需要が今後もしばらく続くとの見方を示している。
とりわけ、米国の半導体企業が台湾の製造力に依存している構図は、同国にとって継続的な輸出の原動力となる可能性が高いと言える。
一方で、こうした好調の裏には、複数のリスクも潜んでいると考えられる。
現在の受注増加には、「AIバブル」とも呼ばれる一時的な需要過熱が影響している可能性があり、需要が中長期的に持続する保証はない。
この成長が持続可能なものとなるか否かは、台湾が技術力をさらに高めつつ供給リスクをいかに最小化できるかにかかっているといえる。サプライチェーンの多様化や外交的なバランス感覚が今後の政策課題となるはずだ。
また、地政学的リスクが顕在化する中では、特定市場への依存を避ける戦略的分散が求められることになるだろう。
今後の展望としては、AI市場の成熟度や米中関係の推移に強く左右される不安定な局面が続くと見られる。
それでも、台湾がハイテク製造において不可欠な存在であるという構図は、当面の間変わらないだろう。