ビザ、アフリカ含む3地域でステーブルコイン決済を拡大 資金移動の未来見据え新戦略

米国時間2025年6月18日、米決済大手ビザ(Visa)は、欧州・中東・アフリカ(CEMEA)地域におけるステーブルコイン機能の拡大を発表した。
アフリカの暗号資産取引所イエロー・カードと提携し、国境を越えた効率的な資金移動の実現を目指す。
ビザ、欧州・中東・アフリカでUSDC活用の決済基盤を拡大
ビザは、アフリカを含む中欧・東欧、中東、アフリカ地域(CEMEA)におけるステーブルコイン機能の拡大を正式に発表した。
今回の取り組みでは、アフリカの暗号資産取引所イエロー・カードとの戦略的提携を通じ、国境を越えた送金の利便性と企業の財務業務の効率化を図る。
この提携により、利用者はステーブルコイン「USDコイン(USDC)」を活用し、従来の銀行網に依存せずに迅速かつ低コストでの支払いが可能になる。
USDCは米Circle社が発行する価格安定型の暗号資産で、米ドルと1対1で連動する設計がなされている。
ビザは2023年にUSDC決済をいち早く導入し、主要決済ネットワークとして初めてサークル社と連携。
以降、USDCを基盤とした取引額はすでに2億2500万ドル(約326億円)を超えている。
ビザのCEMEA地域製品・ソリューション部門の責任者であるゴッドフリー・サリバン氏は、「資金を移動するすべての機関は2025年、ステーブルコイン戦略が必要になると考えている」と述べ、今後の決済インフラの変革を示唆した。
提携先のイエロー・カードの共同創業者であるクリス・モーリスCEOは、「ビザと共に、伝統的金融と資金移動の未来を結ぶ橋を築いている。より安全で効率的かつ透明性の高い支払いを実現するため、新たなソリューションの革新を継続していく」と述べた。
地域の金融包摂と資金流動性を強化 利便性の裏にあるリスク
ビザが今回注力するCEMEA地域は、伝統的な銀行サービスの浸透率が比較的低く、モバイル決済や仮想通貨が急成長している。
ステーブルコインによる支払いは、こうした地域における金融包摂(※)の促進に資するだけでなく、企業の流動性管理や国際送金の課題を大きく改善する可能性がある。
一方で、ステーブルコインの利用拡大には、発行主体や担保管理の不透明さ、規制の未整備などといったリスクもある。
国境を越えた決済における規制整合性の確保や、マネーロンダリング対策の実効性が今後の焦点となるだろう。
とはいえ、今回の発表は、ステーブルコインの本格普及に向けた一歩として評価できる。
金融のインフラとしてのステーブルコインが定着すれば、新興市場における経済活動の底上げにもつながる可能性がある。
※金融包摂:銀行口座を持たない人々や中小企業など、従来の金融サービスから取り残されがちな層にも、包括的に金融サービスを提供しようとする考え方。