マレーシア当局、中国企業のNVIDIA製AIサーバー使用を調査 規制違反の可能性を精査

2025年6月18日、マレーシア貿易省は、同国にある中国企業が米NVIDIA製半導体を用いたAIサーバーを運用しているとの報道を受け、規制違反の有無について関係機関と共同で調査を進めていると発表した。
中国企業がNVIDIA搭載AIサーバーをマレーシアで運用か
米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたところによれば、2025年3月初旬、中国のエンジニアが大量のハードドライブをスーツケースに詰めてマレーシアへ入国したとされる。
目的は、現地のデータセンターに設置された米NVIDIA製半導体を搭載したサーバーを使って、大規模言語モデル(LLM※)の訓練を行うことにあったとみられる。
これを受けてマレーシア貿易省は現在、関係当局と連携しながら国内の法規制に抵触していないか確認を進めていると明かした。
中国企業がこの手法で米国の対中輸出規制を回避している可能性もあり、慎重な調査が求められる状況だ。
NVIDIAの半導体は、生成AIの開発に不可欠な高性能GPUを提供しており、米政府はこれまで中国への直接的な輸出を段階的に制限してきた経緯がある。
※大規模言語モデル(LLM):大量のテキストデータを学習することで自然言語の理解や生成が可能になるAIモデル。GPTやClaudeなどが代表例。
対中規制の“抜け道”が焦点に 東南アジアがAI拠点化する可能性も
今回の事例は、米国による対中技術輸出規制の“抜け道”として東南アジアの第三国を経由する新たな手法が存在することを示唆している。
もしマレーシア国内で米製AI半導体が自由に活用されているとすれば、今後他の中国企業も同様のルートを模索する可能性がある。
こうした動きは東南アジア諸国、とりわけインフラや通信環境の整備が進むマレーシアやシンガポールを、新たなAI開発拠点として浮上させる契機になりうる。
実際、現地でのデータセンター整備やクラウド設備の拡充も進行中であり、規制が緩やかな環境を好むテック企業にとって魅力的な条件が整いつつある。
一方で、米政府が今後これらの“迂回供給”に対してどのような措置を取るかが注目される。NVIDIA製品の間接的な流通が続けば、さらなる輸出管理の強化や域外規制の導入といった動きも現実味を帯びるだろう。
マレーシア当局の調査結果によっては、国際的なサプライチェーンの再編にも影響が及ぶ可能性がある。