NTT東日本、RPA業務の自動化を加速 生成AIでマニュアル解析・シナリオ作成を一括対応

2025年6月18日、NTT東日本がドキュメント構造化ツール「Egeria-RAG」を導入したことを、提供元のPKUTECHが発表した。
生成AIによる業務マニュアルの解析とRPAシナリオの自動生成が可能になる見込みであり、国内のRPA推進における課題解決に寄与する技術として注目できる。
RPA導入の壁「シナリオ作成」を生成AIが打破
NTT東日本は、業務効率化の一環としてRPA(※)の社内導入を進めてきたが、シナリオ作成の手間や属人化が大きな障壁となっていた。特に新規業務のRPA対応においては、人材不足やコストの面が課題であった。
また、既存シナリオの修正や解析も困難で、業務拡張時の柔軟性に乏しい問題があったという。
そこで、PKUTECHが開発した「Egeria-RAG」を活用し、図表付きマニュアルからRPAシナリオを自動作成する、という検証が実施された。
Egeria-RAGは、三菱総合研究所との共同研究に基づく技術を核としている。図表を生成AIが処理可能な形式に変換した上で、文書全体を章や節といった単位で構造化できることが特徴だ。
検証では、生成したRPAシナリオが正常に稼働していることが確認された。
さらに、従来型のツール「Unstructured」と比較して、Egeria-RAGの解析精度が優れていることも裏付けられたという。
※RPA(Robotic Process Automation):業務プロセスを自動化するソフトウェア技術。定型的なデジタル作業を人間の代わりに実行する。
自動化の裾野広がる可能性 属人化解消と保守負担軽減へ
今回の導入で注目すべきは、RPAシナリオ作成業務そのものを自動化できる点である。PKUTECHは今後、Egeria-RAGによるシナリオ自動生成の適用範囲を広げる方針を示しているため、全社的な効率化への貢献も期待できそうだ。
属人化していた業務ノウハウが標準化され、誰でも均一なシナリオを生成できるようになることで、担当者の交代や退職によるリスクが低減できることはメリットだろう。
また、マニュアルの変更時や、保守・運用フェーズでのシナリオ解析・修正において、工数を削減できる可能性もある。
一方で、すべての業務が自動化に適しているわけではない点には留意が必要だ。
複雑で例外処理が多いプロセスでは、シナリオの精緻な設計や人間の判断が依然として求められるだろう。
それでも、生成AIと構造化技術の融合により、これまで手間とスキルが必要とされてきた業務自動化の「入口」が大きく開かれたのは間違いない。
今後、他の大企業や自治体においても同様の取り組みが進む可能性があり、日本のホワイトカラー業務改革の加速に拍車をかけると見られる。