設立から半年の個人主導AIスタートアップBase44が116億円もの高値で買収 AIによるノーコードアプリ構築ツールが好評価

2025年6月18日、イスラエルのWeb開発大手Wixは、個人主導のAIスタートアップBase44を現金8000万ドル(約116億円)で買収したと発表した。
創業から半年、従業員数わずか8人の企業が高額評価された形だ。
急成長ノーコードAIのBase44、現金8000万ドルでWix傘下に
Base44は、イスラエルの開発者マオール・シュロモ氏が2024年末に立ち上げたAIスタートアップで、創業から6か月で25万人のユーザーを獲得した。
資金調達なしのブートストラップ経営ながら、2025年5月には18.9万ドルの黒字を計上するなど、驚異的な成長を遂げた。
同社が開発したのは、AIによってコードを書かずにシステムを作成できるツールで、いわゆる、「バイブ・コーディング(※)」と呼ばれるものだ。
専門的なコーディング知識を必要としない点が、非エンジニア層からの支持を集めた。
Wixはこの買収によって、既存のノーコードWebサイト構築機能に加え、より高機能なアプリ開発基盤を取り込む狙いだ。
買収額は全額現金で、約2500万ドルは社員8人へのリテンション(引き留め)ボーナスとして支払われる。
Base44が知名度を高めたのは、シュロモ氏が構築の過程をX(旧Twitter)やLinkedInで公開し、透明性の高い経営姿勢を行った点が大きい。
シュロモ氏は過去にデータ分析スタートアップ「Explorium」を創業しており、イスラエルの技術業界では既に著名な存在だった。
また、Base44は大手企業eToroやSimilarwebとも提携を結んでおり、AWS上でAnthropic製のLLMを活用していた点も、Wixの評価を高めた要素の一つであるようだ。
※バイブ・コーディング:AIを活用して、自然言語による指示(プロンプト)を通じてコードを生成・開発する新しいプログラミング手法。
開発者が「こういうものを作りたい」「この部分をこんな感じにして」といった「雰囲気」や「ノリ」で、AIがコードを生成できることから、名付けられた。
ソロ創業の成功例が示す可能性と課題 買収の波及効果は
今回の買収は、AIとノーコードの融合がもたらす新たな企業価値の象徴ともいえる。
わずか半年で高評価を得たBase44は、個人あるいは極少人数による起業でも、大規模資金なしで高い市場価値を生む「ソロユニコーン」という概念に現実味を帯びさせた。
また、今回の流れは、小規模でも完成度の高いAI製品を開発する開発者にとって追い風になると思われる。
WixやNotionのようなノーコード系大手による買収ニーズが高まれば、開発者の出口戦略としての売却が現実的な選択肢となるだろう。
一方で、このモデルの持続性には疑問も残る。
AI基盤の成長にはインフラコストがかさみ、スケールの壁に直面するのは時間の問題だ。
実際、シュロモ氏も「これまでの道のりは、本当にクレイジーだった」と述べ、資本力を持つ企業への売却を選んでいる。
ノーコードと生成AIの融合は、開発者層だけでなく企業ユーザーにも恩恵をもたらすと考えられるが、機能の高度化に伴い、セキュリティリスクや品質管理の課題も拡大する可能性がある。
Base44の成功は、才能と透明性、タイミングが重なった特例であり、今後の模倣には慎重さが求められるだろう。