アビスパ福岡と三井住友銀行、Web3活用の奨学金制度「DAOアカデミー共育プログラム」創設

2025年6月18日、J1クラブのアビスパ福岡と三井住友銀行は、新たな育成支援施策「アビスパDAOアカデミー共育プログラム supported by SMBC」を発表した。Web3技術を活用し、DAO参加型で若手選手を経済的に支援する初の試みとなる。
DAOが選手育成に関与、奨学金で機会の壁を越える
アビスパ福岡と三井住友銀行が共同で始動する本プログラムは、2025年3月に締結された「Web3コミュニティ共創パートナー」契約にもとづく第一弾施策である。
この取り組みの核は、サッカーアカデミー選手の発掘から支援までをDAO(分散型自律組織 ※)が関与する点にある。2026年度以降のU-15アカデミー加入選手を対象に、セレクション段階からDAOメンバーが評価や支援方針の決定に携わる。
選手がアカデミー入りした後は、三井住友銀行およびDAOメンバーによる奨学金制度が用意されており、最大1年間の国内遠征費用が実質無料になるほか、選定選手の海外個人留学費用も実質無償となる。
2025年6月25日から受付開始となるU-13セレクション参加者が対象となり、投票などを通じて支援選手が決定される予定だ。
支援の対価としてDAOメンバーには、アビスパトークンや支援証明NFTが付与され、支援選手からの活動報告も届く仕組みだ。クラブ側は、将来的に選手がトップ昇格や海外移籍などで利益を生んだ際には、支援者に対する利益還元も検討している。
本制度は、経済的理由でアカデミー参加を断念していた才能ある選手に対し、平等なスタートラインを提供する新たな道を開くことになる。
※DAO(分散型自律組織):ブロックチェーン上で動作し、スマートコントラクトにより参加者の投票などで意思決定を行う自律的な組織形態。
Web3導入でクラブと支援者の関係が変わる可能性
今回の取り組みは、単なる奨学金制度の創設にとどまらず、Web3を活用してプロスポーツクラブとファンとの関係を再構築しようとする試みでもある。
DAOという参加型の仕組みを導入することで、従来の「観る」ファンから「育てる」ファンへと関係性がシフトしていく可能性がある。
ファンは意思決定に直接関与できるだけでなく、トークンやNFTといったデジタル資産を通じて可視化された「支援の証」も受け取ることができる。これにより、クラブの価値創造プロセスに参加する実感が生まれやすくなる。
一方で、クラブ側の専門的な育成基準と、DAOの投票結果との間にギャップが生じる可能性も考えられるため、今後の運営において慎重な設計が求められる。
また、奨学金制度が短期的な注目を集めるだけで終わらないためには、支援者の持続的な参加を促すインセンティブ設計も鍵となるだろう。
とはいえ、今回のプログラムは、プロクラブがWeb3を用いて社会的価値を創出するモデルケースとして注目に値する。支援者と選手、クラブが新たな絆で結ばれる未来が始まりつつある。