生成AIが校舎設計に子どもの声を反映 葛飾・東四つ木小で児童主体のイメージづくり

2025年6月12日、東京都葛飾区立東四つ木小学校で、生成AIを活用して新校舎のイメージを児童自身が描くワークショップが実施された。
生成AIで描く「理想の校舎」 児童が言葉で未来を形に
葛飾区立東四つ木小学校では、現在計画中の新校舎設計に児童の意見を反映させる目的で、生成AIワークショップが開かれた。
使用されたのは、画像生成AI「Midjourney(ミッドジャーニー)」。児童は自身の思い描く校舎像を言語化し、AIを通じてビジュアル化する体験を行った。
同校は、旧木根川小と旧渋江小の統合により2025年4月に開校した新設校。漫画『キャプテン翼』の原作者・高橋陽一氏が校章を手がけ、歌手のさだまさし氏が校歌を制作するなど、話題性の高い取り組みでも知られている。
今回は、2029年に完成予定の中川中学校との一体型新校舎を見据えた初の意見収集の機会として、6年生が参加。それぞれが思い描くイメージをキーワードにしてAIに入力し、生成されたパース画像をもとに意見交換や修正を重ねた。
設計を担当する安井建築設計事務所の王丸舞子氏は「子どもたちの声はあまり聞けないので、このワークショップを通して、実際に見たり、聞いたりできた。コミュニケーションを活発化できるツールとしてとても有効」と述べた。
また、同社の山野信彦氏も「これまでは選択肢から色を決めるなど単純なことしかできなかったが、生成AIを活用することで、子どもたちでもデザインができるようになった。この点が今回の大きなポイントだと感じている」と話している。
※Midjourney(ミッドジャーニー):ユーザーがテキストで入力したキーワードから高精細な画像を生成するAIツール。デザインや教育、広告など多分野で活用されている。
教育と建築に広がる可能性 生成AIが生む新しい対話
今回の取り組みは、建築におけるユーザー参加型設計の一歩であると同時に、教育現場における生成AI活用の新たな可能性を示している。児童が自身の意見を言葉にし、それがAIによって視覚化されることで、思考の深まりや他者との対話が促されるという副次的な効果も期待される。
単なるICT教育を超え、創造力や表現力、コミュニケーション能力の育成にも寄与するものと考えられる。
一方で、AIが描くビジュアルに頼りすぎることで、現実的な設計条件との乖離が生まれるリスクもある。建築家や教育関係者が生成AIの出力をどのように咀嚼し、実際の設計や教育に落とし込んでいくかが、今後の課題と言える。
しかし、今後もこのような形で子どもたちの声を可視化し、社会に反映させていく事例が増えれば、生成AIは単なるツールではなく、未来を共創する「言葉の翻訳者」としての役割を果たすようになる可能性がある。