ドン・キホーテ運営会社、初のデジタル社債発行へ 若年層への応援資金に活用

2025年6月13日、「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は、グループとして初となるセキュリティトークン(デジタル社債)の発行を決定したと発表した。資金の用途は「若年層支援」に特化するとしている。
1万円から投資可能、majica会員限定で発行開始
PPIHは、同社が運営するドン・キホーテやアピタ、ピアゴといった店舗群に多くの若年層が集まるという実情を背景に、「国内の若年層への応援資金」としての資金調達を掲げた。
今回のデジタル社債は、ブロックチェーン技術を活用したセキュリティトークン(※)形式で発行され、管理にはSecuritize Japanが提供する「Securitizeプラットフォーム」が採用される。フィナンシャル・アドバイザーはSMBC日興証券が務める。
1単位あたり1万円、年限は1年で、総発行額は約1億円を予定。利率は税引前で年1%となり、現金0.3%とPPIHグループの電子マネー「majica」のポイント0.7%で構成される。なお、購入対象はmajica番号付きのUCSカード会員に限定される。
抽選申込は6月13日から7月11日まで特設サイトで受け付け、社債の発行日は8月8日が予定されている。一般個人投資家にとっても参加しやすい条件が整えられているのが特徴である。
※セキュリティトークン:ブロックチェーン技術を用いて発行・管理される有価証券型のデジタル資産。既存の株式や社債と同様の法的保護を受けつつ、取引の透明性や効率性を高めるとされている。
ST市場の拡大背景にPPIHも参入、企業の資金調達に新潮流
PPIHの今回の取り組みは、国内で急速に拡大するセキュリティトークン(ST)市場の動向を反映したものといえる。
ブロックチェーン企業プログマによれば、2025年中に国内のST市場の新規発行額は1925億円、累計発行額は3400億円を超えると予測されている。すでに金融、スポーツ、エンタメなど多分野での導入事例が相次ぐ。
たとえば、トヨタファイナンシャルサービスは今年3月、プログマの基盤を用いて10億円規模のST債を初めて発行。さらにTリーグ所属のプロ卓球チーム「京都カグヤライズ」は、IT大手TISのSTOスキームを活用し、スポーツ分野での資金調達という新たな前例を築いた。
STの導入には利便性や透明性の向上といったメリットがある一方で、流動性の確保や投資家保護といった課題も残る。だが、PPIHのように顧客接点を活用してユニークな資金調達を実施する動きは、他企業の導入の後押しになる可能性が高い。
若年層への支援という社会的メッセージ性も含んだ本案件は、ST市場の認知拡大と実需の両輪を動かす起点になるかもしれない。