アリババの「Qwen3」、公開1カ月で1250万DL突破 世界で最も人気のオープンソースLLMに

2025年6月16日、中国アリババクラウドが提供する大規模言語モデル(LLM)「Qwen3(通義千問)」が、公開から1カ月で全世界1250万件超のダウンロードを記録したと複数の中国メディアが報じた。ここ最近で最も人気を集めるオープンソースLLMとなっている。
Qwen3、各種プラットフォームで記録的ダウンロード数を達成
中国アリババグループ傘下のアリババクラウドが開発した「Qwen3」は、2025年4月29日にオープンソースで公開されたばかりだが、世界中の開発者から爆発的な支持を集めている。
AIモデル共有プラットフォーム「Hugging Face」「ModelScope」「Ollama」上では、Qwen3の各モデル(0.6B、8B、30B、32B)がすべて100万件超のダウンロードを記録。累計では公開1カ月で1250万件を突破し、直近で最も人気のあるオープンLLMに躍り出た。
さらにHugging Face上で派生・拡張されたAIモデルの数も13万件を超え、これは同プラットフォーム内で世界最多とされる。モデル数の多さは、開発者からの注目度と応用範囲の広さを示す指標でもある。
Qwen3が注目された背景には、その構造的な革新性がある。シリーズには中国初となるハイブリッド推論型の「混合専門家(MoE)アーキテクチャ(※)」が採用されており、問題の複雑さに応じて演算資源の配分を最適化する機能が特徴だ。これにより、高度な推論能力と計算効率の両立が実現された。
※混合専門家(MoE)アーキテクチャ:処理対象に応じて複数の専門的サブネットワークから一部を動的に選び出して活用する構造。高精度と省電力性を両立する次世代AIアーキテクチャの一種。
世界のLLM競争で中国勢が台頭 Qwen3が提示する新たな選択肢
Qwen3の登場は、世界のLLM開発競争において中国勢が明確に存在感を強めていることを示している。
中でも注目されるのが、Qwen3のフラッグシップモデル「Qwen3-235B-A22B」の性能だ。数学的推論やコード生成といったベンチマークにおいて、米OpenAIの「o1」や「o3-mini」、X(旧Twitter)の「Grok-3」、グーグルの「Gemini2.5-Pro」、さらには中国DeepSeekの「R1」などと同等のスコアを記録しながらも、より低コストで動作することが報告されている。
特にコスト効率の高さは、スタートアップや中小開発者にとって魅力的な要素だ。高性能なオープンソースLLMはこれまでにも存在したが、運用コストの問題から導入を見送るケースも多かった。Qwen3はその障壁を取り払う存在として、今後一層注目されるだろう。
ただし、オープンソースであることに伴うリスクもある。悪用や誤用の懸念、バージョン管理の難しさなどが考えられ、企業による実装には慎重な判断が求められる。一方で、Qwen3が提示する新たな技術的選択肢は、AIの民主化という点でも重要な意義を持つ。
今後は、米中を中心としたLLM市場の勢力図に変化が生まれる可能性があり、Qwen3の動向は業界関係者にとって見逃せない要素となる。