防衛省が「防衛科学技術委員会」新設 AI・量子技術などで安保強化へ

2025年6月13日、防衛省は安全保障に資する先端科学技術の活用を目的に、有識者による「防衛科学技術委員会(DSTB)」の初会合を開催した。
AIや量子、バイオ分野の専門家から助言を得て、今後の防衛戦略に反映させる方針である。
防衛省、先端科学技術の助言機関を設立
防衛省は13日、先端科学技術の安全保障分野への応用を強化するため、有識者で構成される「防衛科学技術委員会(DSTB)」を正式に発足させた。
初会合には中谷元防衛相が出席し、急速に進展する技術分野での国際的な主導権争いに対応する重要性を訴えた。
DSTBはAIや量子技術、バイオテクノロジーなど、国防上の戦略的価値が高まる領域を対象に、技術的知見を政策に反映させる役割を担う。
委員は大学教授や元自衛隊幹部など15名で構成されており、初代委員長には量子分野の専門家である前川禎通・東北大学名誉教授が就任した。
防衛省は委員全員を、非常勤の「防衛省参与」に任命し、秘密情報へのアクセスを可能にする体制も整備している。官民の枠を超えた技術連携によって、今後の安全保障政策の高度化を図る構えである。
技術覇権競争に備え 官民連携で安保強化へ
DSTBの設立は、米中をはじめとする主要国が先端科学技術を軍事・安全保障分野に積極導入している現状に対抗する意図がある。
特に量子暗号通信や生成AIの軍事転用が現実味を帯びる中、日本においても国家戦略として技術活用を加速させる必要があるとの認識が背景にあると考えられる。
こうした取り組みにより、防衛装備品のスマート化や戦場情報のリアルタイム共有、サイバー領域での防御力向上といった具体的な効果が期待できるだろう。
一方で、軍民技術の境界が曖昧になることで、技術流出や倫理的課題への懸念も浮上すると思われる。
有識者会議を通じた政策形成は、技術の透明性と安全保障とのバランスを模索する重要なステップと位置づけられる。
中長期的には、国内の技術人材育成や企業との共同研究促進にも波及する可能性が高い。