Meta、プラットフォームスタートアップのScale AIに大型投資 創業者ワン氏はMetaへ移籍

現地時間2025年6月12日、米AI企業Scale AIは、Metaから大規模な資金調達を実施したと発表した。
創業者のアレクサンダー・ワン氏はMetaに加わることも決定し、同社のAI開発に参画することになった。
MetaがScale AIに戦略的投資 評価額は4兆円規模に到達
AI開発支援のベースを担う米Scale AIは、Metaからの出資を受け、企業評価額が約290億ドル(約4.1兆円)超に拡大した。
Scale AIは、AIモデルの学習に不可欠な高品質データを構築・整備するプラットフォームを提供し、多くの企業や政府機関にデータインフラを提供してきた。
2016年にサンフランシスコで設立され、機械学習の実装効率を高める自動化ツール群で業界の注目を集めてきた。
今回の資金調達に際し、創業者であるアレクサンダー・ワン氏が、MetaのAI部門へ移籍することも同時に発表された。Metaの社内AI研究を牽引する立場として参画する。
ワン氏は今後もScale AIの取締役を継続する方針で、経営方針の監督には引き続き関与する。
新たな暫定CEOにはジェイソン・ドロージ氏が就任。同氏は2024年にScale AIに最高戦略責任者として入社し、Uber EatsやAxonなどの成長期を支えた経験を持つ。
Scale AIは今回の資金を、技術革新と企業向けAIサービスの拡張、戦略的パートナーシップの深化に活用するとしている。また、一部の資金は既存株主などへの株式分配にも充てられる。
今後、Metaは少数株主としてScale AIの経営に参画することになる。
Metaによる買収的出資 AIデータ産業への影響は
Metaの出資と人材獲得は、AIインフラ市場に大きな波紋を広げる可能性がある。
特に、高品質な学習データの整備を担う企業が、生成AIを主導する大手プラットフォームに取り込まれる構図は、業界の競争環境に変化をもたらす。
ワン氏のMeta移籍は、同社がAI領域での競争力強化を推進する姿勢の表れと言えるだろう。
OpenAIやAnthropicなど、競合各社が高度な基盤モデルを公開・商用化する中で、Metaも研究開発体制の内製化を進める意図があると見られる。
ただ、Metaが関係性を深める中で、広範な組織にベースを提供しているScale AIが独立性を維持できるかは懸念が残る。
Metaは今回の出資で少数株主としての立場をとるが、今後の経営判断やデータ提供方針に影響を及ぼす可能性は否定できない。
AI開発の基盤企業が特定の巨大IT企業に吸収されることで、透明性や中立性が揺らぐ恐れがある。
とりわけ、政府系案件や他の民間企業との取引において、競合とのバランス維持が課題となる。
今回の出資により、MetaはAI開発の根幹を担う「データ整備」という領域での競争優位を築く布石を打った格好だが、その影響は今後数年をかけて表面化していくことになりそうだ。