東京メトロ全駅に傘シェア「アイカサ」導入 年間7.5万本の忘れ物問題に対応へ

2025年6月11日、東京メトロは、傘のシェアリングサービス「アイカサ」を自社管理の全171駅に導入すると発表した。
突発的な雨による使い捨て傘の利用と忘れ物の多発という社会課題に対し、持続可能な解決策として本格導入に踏み切る。
東京メトロ、傘シェア導入で忘れ物削減を狙う
東京メトロは、Nature Innovation Group(東京都新宿区)が展開する傘のシェアリングサービス「アイカサ」を、今後3~5年をかけて自社管理の全駅に導入する計画を明らかにした。
「アイカサ」は2018年に開始されたサービスで、専用のQRコードをスマートフォンで読み込むことで、駅や街中の傘を手軽にレンタルできる仕組みを持つ。
東京メトロでは2022年6月から一部の駅で実証的に設置を進めてきたが、今回の全面導入により、都内の駅の約7割でサービスが利用可能となる見込みだ。
導入の背景には、毎年約7万5000本にのぼる傘の忘れ物の存在がある。
東京メトロ広報によると、同社の落とし物の中で傘は日用雑貨に次ぐ第2位を占め、特に梅雨や夏季のゲリラ豪雨時に急増するという。
これまで、忘れ物の大半は持ち主が判明せず、一定期間の保管後に鉄道事業者が費用を負担して廃棄していた。
アイカサの導入により、こうした処分コストや保管スペースの課題軽減が期待できる。
脱・ビニール傘依存 環境と利便性の両立へ
アイカサの傘にはICチップが搭載されており、位置情報で在庫や利用状況が管理されている。
24時間140円で利用可能なほか、月額280円のサブスクリプションでは2本まで同時レンタルできる。これはビニール傘の平均価格を下回る設定であるため、使い捨て傘への依存軽減にもつながると思われる。
また、環境面の効果も見逃せない。
お笑いコンビ「マシンガンズ」のメンバーでゴミ清掃員としても活動する滝沢秀一氏は、「傘の処分ルールが地域によって異なるため、消費者にとって捨てるのが難しい」と指摘。
たとえば、東京都豊島区では傘が10本を超えると粗大ゴミ扱いになり、処分に手間がかかるという。
東京メトロでは、全駅導入に合わせて自社ロゴ入りのオリジナル傘も展開する予定だ。これは金銭的な収益を目的としたものではなく、環境配慮やESGへの取り組みを社外にアピールするブランディング効果を狙ったものだと考えられる。
今後は他の鉄道事業者や自治体でも、類似の傘シェア導入が進む可能性がある。
ESGやサステナビリティへの関心が高まる中、「アイカサ」のような仕組みが都市のスタンダードとなる日も近いのかもしれない。