アドビ、売上高予想は上振れも株価反応は限定的 生成AIで反撃図るも投資家の懸念根強く

2025年6月12日、米ソフトウェア大手アドビが発表した第3四半期(6〜8月)売上高見通しは市場予想をわずかに上回った。
だが、生成AI分野における競争激化への懸念が払拭されず、投資家の反応は限定的にとどまった。
生成AIへの対抗策を示すも、アドビ株は横ばい
アドビは12日、6〜8月期の売上高を58億8000万ドルから59億3000万ドルと予想し、アナリスト予想平均(58億8000万ドル)をわずかに上回った。
また、一部項目を除く1株利益は5.15〜5.20ドルと見積もり、こちらも市場予想の5.11ドルを上回る水準となり、好決済と言える内容だった。
にもかかわらず、時間外取引で同社株は横ばいに推移し、通常取引の終値は前日比変わらずの413.68ドルで取引を終えた。
これは、投資家が短期的な業績改善よりも、AI時代における競争力の行方に神経をとがらせていることを示している。
近年では、キャンバなどの軽量デザインツールや、ミッドジャーニーなどの画像生成AIが台頭しており、PhotoshopやIllustratorといった伝統的ソフトの市場支配力に陰りが見え始めている。
こうした中でアドビは、独自の生成AIモデル群「Firefly」を主力製品に統合する戦略を進めている。
CFOのダン・ダーン氏は、Fireflyを活用して生成されたコンテンツが累計240億件を超えたと明かし、3月時点の200億件から大幅に増加したと強調した。
競争環境は厳しさを増す 生成AIへの対応が命運握る
Fireflyは、生成AI時代におけるアドビの生き残り策とも言えるサービスだ。
ダーン氏が言うように、数多くのコンテンツの生成実績があるが、それでも投資家にとっては積極的な材料に結びついていない現状がある。
競合の生成AI市場の手ごわさが改めて浮き彫りとなったかたちだ。
アドビは、Photoshopなどの主力商品に生成AI機能を組み込むなどして、巻き返しを図っているが、それがミッドジャーニーやOpenAIなどの強力なAIスタートアップと比較して十分かどうかは不透明である。
アドビの苦戦は、AIスタートアップの登場によって、IT業界における画像分野の勢力図が変わってきていることを如実に示している。
アドビの「Photoshop」「Illustrator」といった製品は、画像編集やデザインの分野で圧倒的シェアを誇っていた。
しかし、創設時から生成AIの利活用を前提としているAIスタートアップは、より迅速かつ便利に、AIを利用した創作体験をユーザーに届けた。
アドビが競争優位を維持するには、AI統合の深化とともにユーザー体験の改善を行い、これらのAIスタートアップに対する優位性を示さなければならないだろう。
今後の業績が、生成AIの波を乗り越えられるかどうかを測る試金石となる可能性は高く、Fireflyを軸とした戦略が市場からの信頼を取り戻せるかが注目される。