防衛省が防衛科学技術委員会を新設 AI・宇宙・サイバー分野の戦略強化へ

2025年6月12日、防衛省は「防衛科学技術委員会(DSTB)」の新設を発表した。AIやサイバー、宇宙など先端技術と防衛戦略を連携させるための専門組織で、学識者や実務経験者が技術面から防衛相へ提言を行う体制が整えられた。
防衛省、AI・宇宙・サイバー領域で専門調査を開始
防衛省が設置した「防衛科学技術委員会(DSTB)」は、科学技術と防衛政策を橋渡しする新たな専門組織である。
委員会はAI、宇宙、情報通信、サイバー、ロボティクスなどの分野別に編成され、約15名の専門家がそれぞれの技術課題を調査し、防衛戦略への応用可能性を探る。
この委員会の設立は、民間技術の急速な進化が安全保障環境にも大きく影響する中で、科学と防衛の連携をより強固にする必要性が高まったことが背景にある。
委員には元航空幕僚長や大学教授などが含まれ、防衛省参与としての任命により機密情報へのアクセスも可能となっている。
13日には第1回の委員会が開かれる予定で、防衛技術政策の方向性を探る議論が本格的に始動する。
防衛・技術・産業の融合が進展 課題は実装と機密管理
今回の委員会設置により、技術革新の成果を迅速に防衛政策に反映させる体制が整うことになる。
AIを活用した自律型兵器やサイバー防衛の高度化、宇宙空間での情報収集といった領域で、産学官の知見を結集した戦略的取り組みが可能になる見込みだ。
一方で、委員に機密情報を扱わせるための法的・運用的な整備も不可欠である。
民間出身の委員が多いことから、情報漏洩リスクへの対策と、防衛技術の出口戦略(実用化)とのバランスが問われることになるだろう。
また、調査・助言にとどまらず、委員会がどの程度、政策決定に影響力を持てるかも今後の焦点となるはずだ。
研究者視点の助言と現場ニーズをすり合わせる中で、防衛産業の技術開発が新たなフェーズへと進む可能性がある。
今後は、防衛技術の民生転用や、国際連携による共同研究の推進なども視野に入れた議論が行われる見通しだ。
防衛と技術の融合をいかに効率よく進めるかが、国家安全保障における競争力を左右する時代に突入していると言える。
参考:防衛省公式「防衛科学技術委員会(DSTB)について」
https://www.mod.go.jp/j/press/news/2025/06/12a.html