アマゾン、米ペンシルベニア州に200億ドル投資 生成AIとクラウド競争の最前線へ

2025年6月9日、米アマゾン・ドット・コムは、ペンシルベニア州に200億ドル(約2兆9,000億円)を投じてデータセンターを拡充する計画を発表した。
ロイター通信が同日報じた。
生成AIやクラウド需要の拡大を背景に、インフラ整備を加速させる方針だ。
生成AI時代に向けたインフラ投資が加速
アマゾンは9日、米ペンシルベニア州における大規模なデータセンター拡張に向け、少なくとも200億ドルの投資を行うと明らかにした。
投資の主目的は、クラウド事業「Amazon Web Services(AWS)」における生成AIとデータ処理能力の強化にある。
最先端のAIモデルを安定的に提供するためには、大量の電力供給と低遅延なネットワーク環境が不可欠であり、各社がインフラ拡充に動いている。
その中でも200億ドルの投資規模は大きく、競争優位を保つための大胆な戦略と評価できる。
新施設の稼働によって、技術職を中心とした1,250人の直接雇用が見込まれている。
また、建設・運営に伴い、サプライチェーン全体でも数千人規模の雇用創出が期待されている。
この発表は、同社が先週発表したノースカロライナ州での100億ドル、台湾での50億ドル超の投資計画に続くものだ。
第1四半期の設備投資額はすでに250億ドルに達しており、2025年内は同水準を維持するとの見方が強まっている。
なお、今回の200億ドルが既存の資本支出計画に含まれるかについては、アマゾンからの公式な回答は得られていない。
投資の具体的な開始時期についても未定となっている。
雇用と地域経済に期待高まる一方、電力インフラの負荷は課題
200億ドル規模の投資は、地元経済を活性化させる取り組みとして前向きに評価できる。
州内での高収入IT職の拡大は、人材の流入や関連産業の成長を促す可能性がある。また、AIインフラ整備は州全体の技術的魅力を高め、将来的な投資誘致にもつながりうるだろう。
一方で、データセンターは膨大な電力を消費するため、地域のエネルギー供給体制に対する圧力が懸念される。
生成AIの普及や高性能化により、データセンターの需要は高まる一方であり、増大するエネルギー負荷が問題となっている。
再生可能エネルギーの利用比率も含め、アマゾンがどのような電源構成で施設を運営するのか、注目したいところだ。
今回の動きは、AI開発の主戦場が「モデル性能」から「インフラ競争」へと移行している現状を象徴していると言えよう。
アマゾンは今後も、世界各地でのクラウド投資を継続すると思われる。企業間、国家間のデジタルインフラ競争は、さらに加速する見通しである。