SMBC日興証券、韓国Web3特化型VCへ戦略出資 ハッシュドの3号ファンド参画

2025年6月5日、SMBC日興証券が韓国のWeb3ベンチャーキャピタル「ハッシュドベンチャーズ(Hashed Ventures)」の3号ファンドに戦略的出資を行うと発表した。Web3領域での国際連携強化と文化発信への布石として注目される動きである。
SMBC日興、Web3特化ファンドに戦略的出資を実行
今回の出資は、韓国を拠点とするWeb3特化型VCであるハッシュドベンチャーズが組成した3号ファンドに対するものである。
ハッシュドベンチャーズは、ソウルのほか、シリコンバレーやシンガポール、中東などにも拠点を構え、分散型プロジェクトへの豊富な投資実績を誇る。これまでにエセナ(Ethena)、ワールドコイン(Worldcoin)、アプトス(Aptos)など有力プロジェクトを支援しており、2020年・2021年にはそれぞれ1.2億米ドル、2.0億米ドルのファンドを組成した。
今回の出資を通じて、SMBC日興証券はハッシュドやそのポートフォリオ企業との連携を強化し、グローバルWeb3ネットワークへの橋渡しを図る方針だ。単なる金融出資ではなく、将来的な事業共創を視野に入れた取り組みと見られる。
SMBC日興証券は2020年に新規事業開発組織「Nikko Open Innovation Lab(NOIL)」を立ち上げ、次世代技術を活用したビジネスモデルの構築に注力してきた。なかでも、Web3領域に特化したチーム「Funder Storm」は、文化的価値の可視化と発信を目的とする合弁会社「Proof of Japan株式会社」を設立するなど、すでに実績を積み重ねている。
Web3分野の国際展開と文化戦略に追い風
今回の出資は、SMBC日興証券のWeb3戦略の加速を象徴するものと位置づけられる。特に、「NOIL」および「Funder Storm」の活動の延長線上にあるという点で、単発的な動きではなく、継続的なビジョンの一環であることが強調されている。
企画統括兼財務担当の後藤歩氏は、出資を「Web3領域における戦略的ビジョンを具体化するものであり、戦略的なコミットメント」と表現。革新的技術と資本市場をつなぐ役割を果たしていく姿勢を示している。
ハッシュドのファンドに参加することは、日本発スタートアップの国際展開にも寄与する可能性がある。ハッシュドは単なる資金提供にとどまらず、ポートフォリオ企業のグローバルネットワーク構築を支援しており、日本企業が国外で事業展開する上での強力なパートナーとなり得る。
一方で、Web3分野は法整備や市場の成熟度に課題が残る領域でもある。特に日本国内では、規制の不確実性が起業家や投資家の足かせとなってきた経緯がある。この点で、「Proof of Japan」が進める教育・規制整備への貢献も、業界の健全な発展に資する取り組みとして期待される。
将来的には、AIやIoTと連携したWeb3技術による文化・芸能支援プロジェクトの発展も視野に入る。技術の進展とともに、資本と文化が交差する新たな経済圏の創出が進む可能性がある。