バイナンス、FDUSD建て5通貨ペアの現物取引を停止へ 6月6日実施で自動売買も終了

2025年6月4日、暗号資産取引所バイナンス(グローバル版)は、FDUSD建ての5つの現物取引ペアの取扱いを2025年6月6日正午(日本時間)に停止すると発表した。
取引量や流動性を考慮した定期見直しの一環で、自動売買機能も同時に終了する。
取引量減などを背景に5ペア取扱い終了
バイナンスは今回、FDUSD(First Digital USD)(※1)建ての5通貨ペア(ACX、IDEX、ORCA、THETA、XAI)との現物取引を終了すると発表した。
該当ペアの最終取引可能時間は、日本時間で6月6日正午までとされている。
さらに、該当ペアにおける自動売買ボット(※2)機能も同時刻で停止されるため、ユーザーに対しては、事前のキャンセルや手動での対応を強く推奨している。
この措置は、同社が定期的に実施している取引ペアの見直しに基づくもので、主に取引量や流動性、プロジェクトの健全性を考慮した結果である。
対象となる通貨はいずれも市場において比較的新しいプロジェクトや特定のユースケースに特化したものであるため、取引量や流動性といった複数の要因を踏まえて見直しが行われたと思われる。
なお、今回の停止はあくまでFDUSD建てペアに限定されており、各通貨の上場自体が廃止されるわけではない。
※1 FDUSD(First Digital USD):香港拠点のFirst Digital社が発行する米ドル連動型ステーブルコイン。法的保護付きの準備金を担保とし、トランザクション透明性を重視している。
※2 自動売買ボット:あらかじめ設定された条件に従い、取引所で自動的に注文を出すプログラム。価格変動に素早く対応できる一方、停止時には損失が出る可能性もある。
停止は市場健全化の一手か、利用者への影響と今後の視点
バイナンスの今回の決定は、単なる取引ペアの削減ではなく、市場の質を維持するための戦略的判断と捉えられる。同社はこれまでも定期的に流動性の低いペアを整理しており、取引環境の最適化とユーザー保護を両立させる姿勢を貫いてきた。
背景には、プロジェクトの開発状況や法的リスク、市場での実需といった多面的な要因があると思われる。
特に近年は、地域ごとの規制強化や取引所に求められるコンプライアンス水準が上昇しているため、あらゆる通貨・ペアが恒久的に上場し続けることは難しい現実があるようだ。
ユーザー視点では、急な取引停止による資産凍結リスクや自動売買ボットの強制終了といった運用面での影響が懸念される。ただし、今回の措置は事前告知のもとで実施されるため、対応余地は確保されている。これを機に、利用中の取引ペアやボット設定の見直しを行う投資家も増えるのではないだろうか。
今回のFDUSD建て取引停止は、特定のステーブルコインに過度に依存することのリスクを示す事例ともいえる。特定のステーブルコイン建てペアに依存するリスクが改めて浮き彫りになった形である。
多通貨対応力を重視するユーザーの間では、基軸通貨の選定基準に変化が生まれる可能性もあるだろう。
今後もバイナンスは、透明性ある審査と明確な上場廃止ガイドラインに基づき、取引環境の健全化を推進していくと思われる。