世界のミリオネア数、過去最多を更新 米AIブームと利下げが資産拡大を後押し

2025年6月4日、米ITコンサル大手キャップジェミニが発表した「ワールド・ウェルス・リポート2025」によれば、世界のミリオネア数が前年比2.6%増の2340万人と過去最多を記録した。
AI関連株の高騰や利下げ環境が、特に米国での資産増に寄与したと分析されている。
AI株高と緩和的金融環境が米富裕層を押し上げ
キャップジェミニの調査によると、2024年における世界のミリオネアの総数は2340万人に達し、過去最多を記録した。ミリオネアの資産規模も拡大傾向にあり、投資可能な資産を100万ドル以上保有する個人が目立って増加した。
とりわけ米国では、AIブームを背景にした株式市場の好調が大きな追い風となった。前年比で56万2000人、率にして7.6%のミリオネア増が確認され、超富裕層(資産3000万ドル超)の保有資産も12%増加している。
一方で地域差も顕著に表れた。アジア太平洋地域では堅調な株価と金融緩和を背景に2.7%の増加が見られたが、中東地域では原油価格の下落が影響し、ミリオネア数は2.1%減少した。
欧州では成長鈍化と市場の不安定さが影響し、全体のミリオネア数は2.1%減少したものの、超富裕層は3.5%増加している。
また、富裕層の投資傾向にも変化が見られた。現金保有率は横ばいだった一方で、暗号資産や未公開株といったオルタナティブ資産への配分は15%と高水準を維持している。
資産集中と格差拡大 市場の熱狂に潜むリスクは
今回のリポートが示すように、世界的な株高とAI技術への期待が富裕層の資産増加を支えたことは事実である。しかし、その一方で中間層以下との格差拡大への懸念も広がっている。
特に米国では、生成AI関連企業の株価上昇がごく一部の投資家に利益を集中させており、資産形成の機会が限定的な層との間で経済的断絶が深まりつつある。こうした傾向は、資産の再配分をめぐる政策議論にも影響を及ぼす可能性がある。
また、利下げ環境は一時的に資産価格を押し上げるものの、インフレや金利の急変など外部要因によってリスク資産の下落が起きる懸念も拭えない。暗号資産や未公開株といった高リスク資産への依存度が高い場合、資産の急減につながるリスクもある。
今後は、資産運用の巧拙がますます問われると同時に、富の集中に対する社会的な議論が加速する可能性がある。
AIブームがもたらす恩恵を広く社会全体に波及させられるかが、次なる課題となりそうだ。