都営交通、AI活用で忘れ物対応が24時間に 「find chat」でスマホから即時検索

東京都交通局は2025年6月4日、AIを活用した忘れ物検索サービス「find chat」を6月10日9時より導入すると発表した。これにより、都営地下鉄やバスなどの忘れ物がスマートフォンやPCから24時間チャットで問い合わせ可能になる。
都営交通が忘れ物検索をAIで効率化、24時間対応も実現
東京都交通局は、都営交通における忘れ物の検索対応を大幅に刷新するため、スタートアップ企業「find」が提供するクラウドサービス「落とし物クラウドfind」(※)を活用し、AIとチャットによる新たな検索システム「find chat」を6月10日午前9時より導入する。
対象となるのは、都営地下鉄、都営バス、東京さくらトラム(都電荒川線)、日暮里・舎人ライナーの車内や駅構内で預かった忘れ物。これまでは営業時間内に電話や窓口で対応していたが、新サービスでは24時間いつでもスマホやパソコンから問い合わせ可能になる。
実際の応対は9時から22時までオペレーターが対応し、21時以降の問い合わせは翌日9時以降に順次返答される。
ユーザーは、専用サイトからメール認証を行えばアプリ不要で利用可能。7月以降はLINEアカウントでの認証にも対応予定だ。
さらに、問い合わせ時に忘れ物の画像を添付すれば、AIが自動で特徴を解析し、検索精度を向上させる機能も搭載されている。
対応言語は日本語、英語、中国語(簡体字)、韓国語の4カ国語に対応しており、訪日外国人にも利用しやすい設計となっている。
※落とし物クラウドfind:AIとクラウド技術を用いて、拾得物の特徴を自動認識・検索・管理できるプラットフォーム。スタートアップ企業findが開発。
人手不足の現場にも恩恵 AI活用がもたらす運用効率と課題
「find chat」の導入によって、利用者の利便性が高まるだけでなく、駅やバス営業所の業務負担軽減にも寄与するとみられる。
これまでは職員が口頭や紙ベースで忘れ物情報を取りまとめていたが、新システムでは忘れ物の写真を撮影するだけで、AIが品名や色などを自動で識別しデータ登録する。この工程が簡略化されることで、窓口対応や登録作業にかかる時間の短縮が期待される。
一方で、オペレーターによる応答は人力に依存しており、深夜時間帯の即時対応は行われない。また、検索結果が見つからなかった場合でも、再検索は1回までとされており、ユーザーの期待に完全に応えられるわけではない。
検索精度や対応スピードの継続的な改善が、今後の信頼性確保に向けた課題といえる。
都営交通を日常的に利用する通勤・通学者や外国人観光客にとって、忘れ物対応が24時間可能になる意義は大きい。
今後、同様のAI活用型サービスが他の交通機関にも広がる可能性は高く、公共交通のデジタル化における一つのモデルケースとなるだろう。