富士通、川崎市と連携しテクノロジーパーク再開発 量子研究拠点と地域共創を推進

2025年6月2日、富士通は神奈川県川崎市と連携し、「Fujitsu Technology Park」の再開発プロジェクトを開始すると発表した。
富士通は創業の地・川崎を拠点として、量子研究と地域連携に基づく持続可能な都市構想を推進する。
創業地で再開発始動、量子研究と地域交流の拠点へ
富士通株式会社は、創業地・神奈川県川崎市にある「Fujitsu Technology Park」の全面再開発を進めている。
2035年の創立100周年を見据えたこの計画では、老朽化した建物の解体とともに研究開発・本社機能の集約が進み、2025年1月には1000量子ビットの量子コンピュータを備えた「量子棟」の建設が始まる。
再開発のコンセプトは「Open Innovation & Technology Park」。
地域・行政・教育機関と連携し、「開かれたまちづくり」を目指す。
計画では、「4つのまち」をテーマに、自然共生を軸としたサステナブルな環境づくり、技術による地域課題の解決、データ活用による健康促進、そして創業の精神を継承する共創空間の形成が進められる。
スポーツ体験施設「Fujitsu Arena」も新設予定で、災害時の避難拠点としての機能も担う。
今後、Fujitsu Museumや多目的施設などを備えたゲートウェイエリアの整備も進められ、同社の技術と理念を可視化する地域交流のハブとして機能する見通しだ。
地域共創とイノベーションの融合
Fujitsu Technology Parkの再開発は、量子コンピューティングという先端技術の研究拠点と、地域に根ざした共創空間の両立を図る意欲的な試みであると言える。
特に2026年度に完成予定の「量子棟」は、日本国内における量子技術の研究・産業応用のハブとして、国際的な存在感を高める可能性がある。
一方で、地域との共創や行政・教育機関との連携を重視する姿勢は、テクノロジー主導の都市開発が抱える社会的孤立を回避するうえで重要な意味を持つ。
「4つのまち」に象徴される多層的アプローチは、企業主導の開発において住民目線の価値をいかに実装できるかを問う実験とも言えるだろう。
また、Fujitsu Arenaやゲートウェイエリアといった施設が稼働すれば、企業活動と市民生活の接点が可視化され、企業イメージの刷新につながる可能性も考えられる。
災害時の避難拠点としての機能も併せ持つ点は、都市のレジリエンス強化に貢献するだろう。
ただし、この構想は長期にわたる再開発である以上、コンセプトの継続性と、行政・地域との協調体制の維持が不可欠になると思われる。
外部環境の変化や技術トレンドの進化にも柔軟に対応できる運営モデルの構築が必要だろう。
今後、プロジェクトが順調に進行すれば、Fujitsu Technology Parkは、単なる企業キャンパスにとどまらず、都市の在り方そのものに新たな視座を提示する先進事例になり得るのではないだろうか。