市民の足をAIで守る　高知市でタクシー配車アプリ「こうちTAXIアプリ」始動

2025年4月21日、高知市で新たなタクシー配車アプリ「こうちTAXIアプリ（通称：こちタク）」の運用が開始された。AI技術によって交通状況を分析し、最適な車両を迅速に配車する仕組みが特徴である。バス路線の減少による移動手段の確保が急務となる中、市民の新たな足として注目を集めている。

減少する公共交通を補完　市が主導する“AIタクシー”の社会実装

高知市では近年、バス路線の縮小や運行本数の削減が相次ぎ、日常の移動手段に困る市民が増加していた。
このような交通空白地の課題解決を目的として登場したのが、「こうちTAXIアプリ」だ。市内の複数タクシー会社が参加し、計476台の車両がこのアプリを通じて配車可能となった。

最大の特徴は、AIを活用した配車システムにある。アプリはリアルタイムの交通状況や車両の空き状況を分析し、ユーザーの現在地に最も適した車両を即時に割り当てる。
これにより、従来よりも待ち時間が短縮され、タクシー利用のハードルが格段に下がると考えられる。

このアプリの企画・運営には、高知市ハイヤー協同組合が中心的な役割を担っている。同協同組合は実績ある技術パートナーと連携し、地域の課題解決に直結するデジタルインフラの整備を進めてきた。

運用開始に先立ち、桑名龍吾市長が実際にアプリを操作し、その利便性と直感的な使いやすさをアピールした。
自治体主導でここまで具体的な利便性の証明が行われる事例は、地方都市におけるデジタル施策の中でも先進的である。

利用促進と地域経済活性化の鍵　「こちタク」に見る今後の展望

「こちタク」では初期ユーザーの獲得を狙い、先着4000人に1000円分のタクシークーポンを配布するプロモーションを展開している。市民にとっては、初めてのタクシーアプリ体験を後押しする好機であり、運転手にとっても新たな顧客接点を得る機会となる。

今後、利用者のデータを活用した機能改善やサービス最適化が進めば、定期通院や買い物といった生活に根ざした需要に応える存在へと進化していく可能性が高い。

また、今回の取り組みは他地域への横展開にも期待がかかる。高知市のように公共交通網が縮小する地方都市は全国に多数存在する。そこで実績を積めば、同様の課題を抱える自治体が参考にするモデルケースになりうる。

現在のアプリには予約機能や支払い方法の拡充といった改善余地も考えられるが、それらを段階的に反映することで、市民の生活を下支えする地域密着型モビリティサービスとして確立されるだろう。