独インフィニオンと米エヌビディア、AI向けに革新的電力半導体を共同開発へ

2025年5月20日、ドイツのインフィニオン・テクノロジーズは、米国のエヌビディアと共同でAIデータセンター向けの新型電力供給用半導体を開発すると発表した。直流電力供給に特化し、効率性と持続可能性を大幅に向上させる狙いだ。
高電圧直流供給でAIデータセンターの電力ロス削減へ
今回の発表は、AI需要の急拡大にともなうデータセンターの電力消費問題に対処する取り組みの一環である。両社は、高電圧の直流(DC)電力をサーバーへ集中供給する新しい半導体ソリューションを共同で設計・開発するとしている。
現在、多くのデータセンターでは交流(AC)電力が使用され、個別の電源ユニットでDCへ変換されている。このプロセスには、大きなエネルギーロスが伴うというデメリットがある。
特に、AI演算処理を担うサーバーでは消費電力が膨大であり、1ラックあたり1メガワットの需要が2020年代末までに発生するとの予測もある。
新たな集中型DC供給システムは、こうしたロスを最小限に抑えることが可能とされ、エヌビディアのインフラ効率向上と、持続可能なAI運用への道を開く技術として期待がかかる。
電力効率の進化がAIインフラ投資に新たな潮流を呼ぶ可能性
今回の提携は、AIインフラに対する投資の質を問う新たな分岐点となる可能性がある。
電力供給の効率化は、冷却や電源設備など周辺インフラへの投資削減にもつながるため、データセンターの設計思想そのものを変える契機となりうるだろう。
また、運用コストの削減や環境負荷の低減もメリットとして挙げられる。
特に、欧州や米国西海岸を中心に進む「グリーンAI」志向の高まりとも合致しており、企業のESG戦略とも連動する可能性がある。
一方で、DC電力供給は標準化や安全性の面では課題も残る。
既存のインフラとの互換性や、過渡期における運用の複雑化が、導入のスピードを左右する要因になり得るだろう。
それでも、AIワークロードのスケーラビリティ確保と持続可能性の両立が急務となる中での今回の共同開発は、今後の技術標準を左右する象徴的な動きと言える。