JR東日本、「TAKANAWA INNOVATION PLATFORM」を始動 高輪ゲートウェイから広がるスマートシティ構想

JR東日本は、2025年3月27日に東京都港区でまちびらきする「TAKANAWA GATEWAY CITY」において、「TAKANAWA INNOVATION PLATFORM」の提供を開始した。都市データ、AI、ロボット技術を結集したこの取り組みは、街全体をスマートシティとして進化させるものだ。
街全体を「知能化」する都市OSとロボット活用で、次世代の暮らしが始動
JR東日本が展開する「TAKANAWA GATEWAY CITY」は、駅を中心に街全体が情報でつながるスマートシティの実証エリアである。今回始動した「TAKANAWA INNOVATION PLATFORM」は、その中核を担う技術基盤として設計された。
同プラットフォームでは、「TAKANAWA GATEWAY URBAN OS」に街や鉄道のデータを集約し、そのデータを「TAKANAWA GATEWAY CITYアプリ」やロボットプラットフォームで活用する。これにより、街を訪れる人々への快適なサービスを実現する。
「TAKANAWA GATEWAY URBAN OS」は、鉄道の運行状況や街の混雑情報を一元的に蓄積するデータ基盤で、イベント計画や商品開発への応用も可能だ。
街独自に開発された「TAKANAWA GATEWAY CITYアプリ」は、Suicaと連携し、生成AIによってパーソナライズされたリアルタイム情報をユーザーに提供する。
「まちこえ」と呼ばれる機能では、現在の混雑度やイベント案内を即時に発信し、ユーザーの利便性を高める。
さらに、アプリ登録者にはドリップコーヒーのプレゼントも行われており、利用促進の施策として機能している。
注目すべきは、ロボットプラットフォームの導入だ。スマートフォンで注文された商品を、AIが街中の混雑情報を解析しながら自律走行ロボットが目的地まで届けるというものである。
配送効率を高めると同時に、来街者に新たな体験価値を提供している。実証は4月のイベントにおけるドリンク配送から開始され、夏にはオフィス内への昼食配達へと拡大する予定だ。
※スマートシティ:ICT(情報通信技術)を活用し、都市機能の効率化や住民サービスの向上を目指す都市開発の概念。交通、エネルギー、防災、医療など多分野にまたがる統合的な設計が特徴。
都市が“サービス化”する時代へ アプリとロボットが生む新しい価値
「TAKANAWA INNOVATION PLATFORM」が目指すのは、街そのものが“サービス”として機能する未来である。これまで個別に存在していた鉄道、商業施設、移動手段、情報提供といった都市機能が、データで統合され一体化することで、訪問者や就業者に対してよりシームレスで快適な体験を生み出す。
たとえば、Suicaをかざすだけでイベント情報や店舗の混雑情報が届く仕組みは、消費者行動の変化を捉えた設計だ。ユーザーは無駄な移動や待ち時間を避けられ、施設側もデータをもとに需要予測や商品配置の最適化を図れる。
さらに、AIを活用した生成コンテンツは、利用者の関心に応じた情報配信を可能にし、広告やキャンペーンの効果最大化にも貢献するとみられる。
今後、サービス対象が高輪エリア内のオフィスや住居にも広がれば、街は「情報によって進化するプラットフォーム」へと変貌していくだろう。
豊洲や柏の葉など、既存のスマートシティ事例と比しても、鉄道会社による都市OSの開発という点で異彩を放っており、全国の都市開発のモデルケースとなる可能性がある。
デジタルとリアルが融合する都市運営の実験場として、高輪ゲートウェイの今後の進化が注目される。