インフォステラ、防衛省と契約締結 宇宙領域把握強化へ電波解析技術を実証

2025年5月23日、地上局シェアリングサービスを展開するインフォステラは、防衛省の「衛星周波数解析技術の実証」案件を受託したと発表した。
スタートアップ技術提案評価方式による契約は、全省庁初の事例であり、日本国内における宇宙安全保障の強化に向けた動きとして注目できる。
宇宙安全保障強化へ 電波解析でSDA能力向上を狙う
インフォステラは、防衛省が実施する「衛星周波数解析技術の実証」案件の契約事業者として選定された。
同社は、地上局を衛星通信事業者に提供するプラットフォーム「StellarStation」を商用展開しており、通信インフラの運用実績を豊富に有している。
今回の実証事業では、衛星が発する電波の特徴を分析することで、宇宙領域把握(Space Domain Awareness:SDA)に必要な技術的基盤を検証し、将来的にはデータベースの構築につなげる方針である。
SDAとは、宇宙ゴミや衛星の軌道情報を扱う従来の宇宙状況把握(SSA)を拡張し、敵対的な衛星の能力・意図、さらには地上の運用インフラにまで対象を広げた新たな概念だ。
衛星を利用した通信・測位は、民間にとっても軍事にとっても不可欠な基盤技術である一方、一部の国が対衛星兵器の開発・配備を進めている現実がある。
こうした背景から、宇宙空間の安定利用を確保するためには、相手の能力や行動を正確に把握するSDA能力の強化が急務となっているという。
スタートアップ技術が国防を支える時代に 新調達方式の先例にも
今回の契約は、防衛省が導入する「スタートアップ技術提案評価方式」によって締結された初の全省庁案件となる。
この方式は、従来の価格・実績重視の調達制度では採用が難しかった革新的な技術を持つスタートアップ企業にも門戸を開くことを目的とした新たな制度である。
インフォステラはこれまで、地上局ネットワークに共通インターフェースで接続可能なプラットフォームを提供し、グローバル展開を行ってきた。これにより、多様な衛星の接続や地上局の一元管理を実現している。
そのため、今回の選定も、その実績と柔軟な技術力が評価されたと思われる。
一方で、SDA技術の発展は諸刃の剣であるとも捉えられる。
宇宙領域における監視能力が向上すれば、他国から「軍事化の加速」として警戒される可能性もあるため、宇宙の安全保障と国際信頼のバランスをどう取るかが今後の課題となるだろう。
それでも、国家戦略として宇宙空間の安定確保を図る以上、革新的な技術を持つスタートアップの積極登用は今後も加速すると考えられる。
SDA能力の向上をインフォステラが担うことで、宇宙領域での安全保障が向上するのは間違いないだろう。