バイナンスCEO、複数国の仮想通貨準備金創設を支援中と発言 政府系ファンドの関心高まる

2025年4月17日、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、仮想通貨取引所バイナンスのCEOリチャード・テン氏が、同社が複数の国の政府や政府系ファンドに対し、仮想通貨準備金の創設に関する助言を行っていることを明かしたと報じた。国名は明かされていないが、各国でデジタル資産への関与が広がりつつある現状がうかがえる。
政府主導で進む仮想通貨準備金構想 バイナンスが支援
バイナンスのリチャード・テンCEOは、各国政府から仮想通貨準備金に関する相談が相次いでいると明かした。
テン氏は具体的な国名を挙げなかったものの、仮想通貨準備金の導入を検討する国が複数存在することを示唆しており、デジタル資産の規制整備も支援していると発言している。このことから、民間企業と政府の協働が進んでいることがうかがえる。
また、FTでは準備金の対象として「ビットコイン(BTC)」のほかに、「仮想通貨」や「デジタル資産」といった表現も用いている。このことから、バイナンスの支援のもと、ビットコインに限らず他の暗号資産による準備金が整備される可能性も考えられる。
テン氏は、仮想通貨による準備金制度の構築に関しては、米国が先行しているとの認識を示している。
さらに、バイナンスとしてはグローバル拠点となる本社の設立も視野に入れた取り組みを進めているという。
国家の資産戦略に変化の兆し デジタル資産の保有は“先手”か
同氏は15日、自身のXアカウントで「ビットコインの取得を早めた国や企業は、その後の価値上昇による利益を享受できる可能性が高い。」「購入を遅らせれば割増金を払うリスクが伴う」との見解を示していた。
さらに13日には、企業の資産運用方針に変化が見られるとして、「従来型の資産だけでなく、ビットコインをはじめとするデジタル資産への関心が企業間で高まっている」と述べている。
背景には、米国でトランプ政権が仮想通貨、特にビットコインの準備金化に向けた政策を打ち出していることがあると考えられる。
今後、こうした仮想通貨準備金構想は、米国や一部の新興国を起点に、他の国々にも広がる可能性がある。特に、インフレ耐性が弱い国や、ドル以外の価値保存手段を模索する地域では、現実的な政策オプションとして注目される展開になっていくかもしれない。
他方で、国際通貨基金(IMF)や金融安定理事会(FSB)など、国際的な金融規律との調整が不可避となる場面も増えてくるだろう。仮想通貨の国家運用が一般化するには、民間プラットフォームに過度に依存しない自律的な管理体制の構築や、法的な裏付けの整備が必要不可欠だと考えられる。
将来的には、グローバルな仮想通貨拠点としての位置づけを持つ国が、国際金融の新たなハブとなる可能性も否定はできない。
すなわち、国家と仮想通貨の関係は、これからの数年で「実験」から「制度」へと大きく転換するフェーズに差し掛かっているとも捉えられるだろう。