姫路市、生成AIで議会答弁の作成時間を約10分の1に短縮 業務効率化の実証データ公表

2025年5月21日、FIXERは兵庫県姫路市の職員を対象に行った生成AI利用に関するアンケート分析結果を公表した。
同市は、2024年7月から生成AIサービス「GaiXer(ガイザー)」を導入しており、議会答弁などの業務で作成時間が約10分の1に短縮されるなど、高い効率化効果が報告された。
議会答弁や議事録作成で目立つ生成AIの有用性
姫路市では、職員の事務作業負担を軽減する目的で、FIXERが提供する生成AIサービス「GaiXer(※)」を2024年7月より導入している。
この取り組みに関するアンケート調査が、実際に同AIを利用した経験のある市職員72名を対象として、同年10月に実施された。
その結果、職員の68%が「週1回以上」生成AIを活用しており、導入から短期間にもかかわらず、庁内の幅広い部署に利用が浸透していることが明らかになった。
活用用途として最も多かったのは「文書作成」で28%、次いで「文章要約」と「議事録作成」がそれぞれ17%、「検索」が14%となった。
特筆すべきは、議会答弁原稿の作成時間が従来の約10分の1に短縮されたという点である。草案や要旨の作成時間が大幅に削減されたほか、議事録作成では2時間かかっていた業務がわずか15分で完了するなど、業務効率化の定量的効果が報告された。
Excel VBAの自動生成による時間削減や、生徒アンケート分類業務で約237時間の作業が約50時間に圧縮されるなど、複数の事例で大幅な省力化が確認された。
※GaiXer(ガイザー):FIXER社が提供するエンタープライズ向けの生成AIサービスで、文章作成・要約・データ処理補助などを行う法人向けの業務効率化ツール。
市職員の85%が時短を実感 今後の導入拡大に期待と課題
アンケート結果では、生成AIを使用した職員の約85%が「時間短縮効果を実感した」と回答しており、職場での導入効果に対する評価はおおむね好意的である。
特に非エンジニア職員がVBAコードを生成できるようになった点や、個人情報のマスキング処理を伴う煩雑な作業の効率化は、行政の実務における生成AIの可能性を示している。
一方で、生成AIの導入を進める上での課題も浮き彫りとなった。
職員間での活用事例が十分に共有されていない現状に対し、「活用事例の横展開を希望する」「勉強会の開催を求める」といった声が多数寄せられているため、今後は利活用の促進に向けた内部支援体制の整備が必要となるだろう。
具体策としては、生成AIの活用スキルを高めるためのワークショップ開催や、成功事例の集約・共有など、運用支援策の拡充が進められるのではないだろうか。
生成AIは単なる業務補助にとどまらず、職員の創造的・判断的な業務へリソースを再配分することで、行政サービスの質を向上させる可能性も秘めている。
今後の活用範囲の広がりとともに、データ管理や情報セキュリティ面での対応にも注視が必要となるだろう。