博報堂とDAZNが戦略提携 スポーツファンの「感情」を軸に広告を革新へ

2025年5月23日、博報堂はスポーツ動画配信大手DAZN Japan Investmentと、感情を起点にした広告開発に関する戦略的提携を結んだと発表した。
新設されるクリエイティブ組織を通じて、スポーツ観戦時の熱狂や感動を捉えた新しい広告サービスの創出を目指す。
博報堂とDAZN、感情起点の広告サービスを共同開発
博報堂とDAZN Japan Investmentは、スポーツにおけるファンダム(※)の感情を分析・活用した広告および視聴体験の開発で協業することを発表した。
博報堂は、生活者視点のクリエイティブ開発に定評があり、年間7,700試合以上を配信するDAZNの豊富な映像資産と技術を掛け合わせることで、従来にない広告価値を生み出すとしている。
両社共同で「DAZN CREATIVE FOR BRAND」というクリエイティブチームを立ち上げ、広告主ごとの課題に応じた表現手法を構築し、広告効果の最大化を図る。
AIを活用して観戦中の視聴者やファンの感情をスコア化し、広告の配信タイミングや内容を最適化することで、技術の導入を行う。
さらに、リアルとバーチャルを融合した、新たなスポーツ観戦体験の構築も視野に入れている。
両社は、広告分野におけるプロダクト開発やサービス検証を協力して進め、中長期的な成長を見据えた取り組みを展開する。
さらに、日本のスポーツを活性化させるため、さまざまな業界・企業と協力をする予定だ。
※ファンダム:特定の対象(例:スポーツチームやアーティスト)に熱狂的な愛着を持つファンの集団や文化を指す。
「感情×AI」の広告が拓く新市場 効果検証と今後の展開
本提携は、デジタル広告業界における「感情起点」の新たな潮流を象徴するものであり、今後の広告価値創出の方向性を示す試金石となる可能性がある。
AIによって視聴者の感情をリアルタイムで可視化し、広告体験にダイレクトに反映する試みは、広告のパーソナライズを一段と進化させると期待される。
一方で、感情の解析精度やプライバシー保護への配慮など、運用にあたっては慎重な検討が求められる分野でもある。
また、熱狂の瞬間に適切な広告を差し込む手法が、ユーザーの体験価値を損なわない形で成立するかどうかも今後の焦点となるだろう。
「感情×AI」型の広告手法は、スポーツ領域に留まらず、音楽やeスポーツ、ライブ配信といった他のエンタメ分野への波及も予想できる。
特に、リアルタイムで高揚した視聴者の感情に即応する広告設計は、ブランド体験の新たな形を提示し、広告の「割り込み」から「共鳴」への転換をもたらすかもしれない。
今回の博報堂とDAZNの提携は、日本発の感情テック×広告モデルとして、グローバルに展開される潜在力を持つといえる。
ただし、技術の精緻化と倫理的基準の明確化が、今後の成否を大きく左右することになるだろう。