ソニー、廃棄テレビ部材を新品のテレビにリサイクル開始 困難だったテレビ部材の再利用を可能に

2025年4月22日、ソニーは使用済みテレビの背面カバーから回収したプラスチックを新製品のテレビに再利用する「水平リサイクル」の実用化を発表した。
この取り組みは、4K有機ELテレビ「BRAVIA 8」の65V型モデルで初めて採用され、2025年内に全世界向けに出荷される予定だ。
使用済みテレビ部材の再利用を可能にしたソニーの技術革新
水平リサイクルとは、使用済み製品から回収した材料を同種の新製品の原料として再利用する循環型のリサイクル手法である。
これまで、使用済みテレビの背面カバーには多種多様なプラスチックが使用されており、強度や質感の違いから新商品への直接の再利用は困難だった。
しかし、ブラビアの設計部門とソニーセミコンダクタソリューションズのSORPLAS(※1)開発チームが連携し、テレビへの再利用に適した部材の選別技術と最適な材料混合法を開発した。
この技術により、メーカーを問わず使用済みテレビの背面カバーから特定のプラスチックを回収、選別し、原材料の一部として再利用しながらも、従来のSORPLASと変わらない高品質を維持している。
さらに、将来的には、SORPLASを採用した背面カバーを回収・再利用する「クローズドリサイクル(※2)」の実現を目指している。
※1 SORPLAS(ソープラス):ソニーが開発した難燃性再生ポリカーボネート樹脂で、高品質かつ高再生材率を実現する。バージン材に比べて製造時のCO₂発生量を大幅に低減できる。
※2 クローズドリサイクル:使用済み製品を回収し、同種の新製品の原料として再利用する完全循環型のリサイクル手法である。これにより、資源の有効活用と廃棄物の削減が期待される。
環境配慮と製品品質の両立を目指すソニーの今後の展望
ソニーが発表した「水平リサイクル」の実用化は、家電業界における資源循環の新たな基準を示すものであり、今後の展開が注目される。
特に、使用済みテレビの背面カバーから回収したプラスチックを新製品に再利用する技術は、ほかの家電製品への応用可能性を秘めている。
たとえば、冷蔵庫や洗濯機などの大型家電にも同様のリサイクル手法が導入されることで、資源の有効活用が一層進むと考えられる。
また、ソニーが開発した難燃性再生プラスチック「SORPLAS」は、耐久性や加工性に優れており、他社製品への採用も期待される。これにより、家電業界全体での環境負荷の低減が進む可能性がある。
さらに、ソニーが目指す「クローズドリサイクル」の実現に向けては、製品回収の効率化や消費者の協力が不可欠である。そのため、リサイクルインフラの整備や消費者教育の強化が求められるだろう。
今後、ソニーの取り組みが他の企業や業界にも波及し、持続可能な社会の実現に向けた動きが加速することが期待される。
特に、環境意識の高まりとともに、企業の社会的責任が問われる中で、ソニーのような先進的な取り組みが新たなスタンダードとなる可能性がある。