「行政事業レビューAIアイデアソン・ハッカソン」開催 AI活用で政策の質向上へ

2025年5月16日にデジタル庁で開催された政府主催ハッカソンで、行政事業レビューへ生成AIを導入する具体策が披露された。国内でのデジタル行政改革の新たな展開として注目されている。
チャットボットや自動リサーチで効率化 行政レビューにAIが与える実効性
政府が推進する「行政事業レビュー」は、各府省庁が編成した予算事業の妥当性を点検する取り組みであり、無駄の削減や政策の質向上を目的としている。
現在、そのプロセスにAIを導入することで、より効率的かつ高度な政策形成を目指す動きが加速している。
今回実施された「AIアイデアソン・ハッカソン」では、約30人のエンジニアが集まり、AIを活用したレビュー支援のプロトタイプ開発を行った。
技術協力には、AWSジャパン、グーグル・クラウド・ジャパン、日本オラクル、日本マイクロソフトといった大手テック企業が名を連ねている。
特に注目されたのが、チャットボットを用いたレビューシート作成の支援機能だ。従来、時間と手間がかかるこの作業において、AIが過去の類似事業やガイドブックを参照し、成果目標の提案やロジックモデルを提示する役割を果たす。
これにより、レビュー作業の属人性が減り、審査の標準化と効率化が期待される。
さらに、EBPM(根拠に基づく政策立案)の強化を目的に、関連研究をAIが自動検索し、要点を日本語で要約・提示するシステムも検討された。
検索条件の最適化や信頼度の可視化によって、より質の高い政策判断が可能になると考えられる。
「成果を出すフェーズへ」省庁横断で広がるAI活用と次なる展望
平将明行政改革担当相は、AIを活用した行政事業レビューの仕組みをデジタル庁で本格的に実装し、ほかの省庁にも展開する方針を示した。
これにより、省庁ごとのレビューのばらつきを是正し、国全体での政策評価の標準化が進む見通しだ。
また、AIの行政業務への導入は単なる効率化にとどまらず、歳出削減につながる提案の自動生成など、政策の質そのものを向上させる可能性がある。職員の業務負担が軽減されれば、より本質的な判断や議論に集中でき、結果として無駄の少ない行政が実現する未来も描ける。
最終的には、AIと人間の役割分担を明確にしたハイブリッド型の政策評価体制が定着していくと予測される。
技術と制度、人材と倫理が有機的に組み合わさることで、真に持続可能な行政改革が実現されるのではないか。