Googleは2024年2月4日、「責任あるAIの進歩に関する報告書」を発表した。同社のAI戦略における消費者重視の姿勢が強調され、セキュリティ強化や新ツールの導入など、具体的な取り組みが明らかになった。

AIリスク管理とセキュリティ強化に注力

報告書では、AIのリスク管理手法が詳細に説明されている。

Googleは300以上の安全研究論文を発表し、AI教育やトレーニングに1億2000万ドルを投資したことを明らかにした。セキュリティ面では、レッドチーム演習（※）を実施し、AIモデルの保護方法について具体的な取り組みを示した。

新たなツールとして、AI生成の誤情報を追跡するためのオープンソースツール「SynthID」が紹介された。

これらの取り組みは、AIの安全性確保と責任あるイノベーションの推進を目指すものだ。

AI原則の更新と兵器利用に関する方針変更

Googleは今回の報告書で、AI原則を「大胆なイノベーション」「協調的な進歩」「責任ある開発と展開」の3つに基づいて更新した。

注目すべき点として、AIを武器開発や市民監視に利用しないという従来の誓約が削除されたことが挙げられる。

この変更により、AI技術の倫理的な利用に対する疑念が生じる可能性がある。さらには、兵器の使用事例を再評価する余地が残されることとなった。

一方で、消費者向けの重点として、エンドユーザーの安全性、データプライバシー、セキュリティに重点を置いており、誤用やサイバー攻撃からの保護が強調されている。Frontier Safety Frameworkも更新され、新たなセキュリティ勧告や誤用緩和手順が追加された。

これらの変更は、AIの発展と社会的責任のバランスを取ろうとするGoogleの姿勢を反映したものと言える。

今後、GoogleはAI技術の発展と社会的責任のバランスを取るために、さらなる取り組みを進める必要があると考えられる。

特に、消費者の信頼を維持するためには、透明性のある情報提供や、倫理的な利用に関する明確なガイドラインの策定が求められるだろう。

※レッドチーム演習：セキュリティシステムの脆弱性を発見するため、攻撃者の視点から行われる模擬的なサイバー攻撃演習のこと。