GMOがグループ内のAI人材育成に年間10億円 生成AIツール30種活用

2025年5月19日、GMOインターネットグループは、グループ全体でAI人材の育成を加速するため「GMO AIブースト支援金」の創設を発表した。
年間約10億円を投じ、従業員8,000人を対象にAIツールの利用を支援するもので、企業全体の生産性向上と競争力強化を狙う取り組みとなる。
自律的なAI活用を促す新制度 生成AIツール30種を支援対象に
GMOインターネットグループが始めた新たな人材育成施策、「GMO AIブースト支援金」の目的は、グループ内の約8,000人の従業員がAIツールを自律的に活用できるように支援し、全社的なスキルの底上げと生産性向上を図ることにある。
支援金は年間で約10億円を投じる規模で設計され、1人あたり最大1万円までの生成AIツール(※)の利用料を補助するという。
これにより、社内のさまざまな業務フローに生成AIの力を取り入れ、従業員一人ひとりがAIの力を使いこなす土壌を育てることが期待される。
支援対象には、法人向け生成AIプラットフォーム「天秤AI biz byGMO」をはじめ、「ChatGPT Plus」「Claude Pro」「Gemini Advanced」「Cursor」「GitHub Copilot」など、先進的なAIツール30種類が含まれており、多様な業務ニーズに対応できる設計になっている。
特筆すべきは全従業員を対象とした“自律的活用”の促進に主眼が置かれている点である。トップダウンではなく、個人ベースで生成AIの活用を促進することで、現場主導の生産性改革を実現しようとしている。
※生成AIツール:テキストやコード、画像などを自動生成するAI技術を用いたアプリケーション。業務の効率化や創造的作業の支援に用いられている。
企業競争力を左右する“AIリテラシー格差”への対策 今後は導入成果が焦点に
GMOインターネットグループの今回の取り組みは、単なる福利厚生的な支援ではなく、経営戦略と直結したものと捉えるべきだろう。
生成AIの活用は業種を問わず業務効率を大きく変える技術革新である一方、社内での“AIリテラシー(※)格差”が生産性のボトルネックになるという課題が、昨今は顕在化している。
GMOはこれを先回りして解消しようとしており、今回の支援金制度もその一手だと考えられる。
特に注目すべきは、対象となるAIツールが30種類と多岐にわたる点である。
これは従業員が自分の業務スタイルに応じた最適なツールを選択できるよう設計されており、ツールの強制利用ではなく“選択と適応”に重きを置いた設計と読み取れる。
このアプローチにより、AI利用が形式的なものに終わるリスクを回避し、実効性の高い活用を促進できる可能性がある。
一方で、今後の課題としては、ツールの導入によって具体的にどのような成果が出たのか、効果測定とフィードバックの仕組みが問われてくると思われる。
また、AI活用の効果は個人だけでなく組織レベルでの連携にも依存するため、部門を横断したノウハウ共有や社内文化の醸成も重要だ。
企業の競争力がAI活用スキルに左右される時代において、このような先進的な制度設計が業界内外から注目を集めることは間違いないだろう。
他社への波及効果や制度のブラッシュアップなどにも注目したい。
※AIリテラシー:AIを正しく理解し、業務や日常生活で適切に活用するための知識やスキルのこと。ビジネス現場では、ツールの使い方だけでなく、AIの特性や限界を理解することも含まれる。