サークル社、コインベースとリップルからの買収提案を受ける

2025年5月19日、米国のステーブルコイン発行企業サークル社が、仮想通貨取引所のコインベースおよびリップルから買収提案を受けていることが報じられた。USDCの発行元として知られる同社は現在IPOを準備中である。
50億ドル超の企業価値を求めるサークル社、買収提案を拒否しIPO路線を維持
サークル社は、ステーブルコイン(※)「USDC」の発行元として、現在世界で第2位の地位を確立している。
今回報じられた買収提案に対し、同社は少なくとも50億ドルの企業価値を求めているようだ。リップルが提示した40〜50億ドルのオファーを「低すぎる」として拒否したという。
同社は2025年4月にIPO(※)の目論見書を米証券取引委員会(SEC)に提出済みであり、上場準備が進行中である。過去には2022年にSPAC(特別買収目的会社)による上場計画も持ち上がっており、その際には企業価値が90億ドルと評価された。この数字と比較しても、リップルからの提案は市場評価に届いていないとする見方が強い。
また、サークル社と長年パートナー関係にあるコインベースも買収に関心を示しているようだが、具体的なオファー内容は明らかになっていない。USDCの普及において両社は強く連携しているため、買収よりも戦略的提携の深化を志向している可能性もある。
※ステーブルコイン:価格が米ドルなどの法定通貨に連動する仮想通貨。価格変動を抑える設計により、決済や送金に適しているとされる。
※IPO(新規株式公開):企業が株式を証券取引所に公開し、一般投資家から資金を調達する手段。企業の透明性や信頼性を高める効果がある。
リップルの市場参入と規制強化下でのサークル社の選択肢
ステーブルコイン市場は現在、テザー(USDT)が圧倒的なシェアを持つ。また、USDCはその代替として多くの機関投資家やDeFiプロジェクトに支持されてきた。
一方、リップルは今年新たに、ステーブルコイン「RLUSD」をローンチした。この分野への参入は、リップルにとって事業拡大の鍵になると思われる。
そのため、サークル社を買収することで、自社のエコシステム内で安定的な決済手段を確立したいのだろう。
一方で、ステーブルコイン市場は現在、特に米国において規制の強化が進行中であり、発行者に対するライセンス要件や準備資産の透明性などが議論されている。
このような環境下で、サークル社が自立的なIPOによる資本調達と市場信頼の獲得を重視しているのは、将来のレギュレーションに対する備えとも言えるだろう。
市場の不確実性と競合他社の攻勢が強まる中、サークル社がどの選択を取るかは業界の今後を左右するだろう。
仮に買収が成立すれば、USDCの方向性が変わる可能性があり、逆にIPOによって独立性を維持すれば、同社は一層の国際展開と信頼性向上を目指す局面に入ると思われる。
いずれにせよ、2025年後半は、ステーブルコイン業界にとって重要な転機となりそうだ。