ブロックチェーンの活用動向と将来性を技術的観点から考察
・ブロックチェーンはどんな分野に活用できる?
・ブロックチェーンの活用動向は?将来性は?
このように、ブロックチェーンが実際にどのような分野に活用できるのか、まだ明確にイメージができない人も少なくないでしょう。
本記事では、ブロックチェーンを構成する技術に焦点を当て、その活用動向とその将来性について考察してきます。
ブロックチェーンの定義について
まず始めに、「ブロックチェーン」の定義を確認しておきましょう。日本ブロックチェーン協会によれば、ブロックチェーンは以下のように定義されています。
・狭義的なブロックチェーン
「ビザンチン障害を含む不特定多数のノードを用い、時間の経過とともにその時点の合意が覆る確率が0へ収束するプロトコル、またはその実装をブロックチェーンと呼ぶ。」
・広義的なブロックチェーン
「電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術を広義のブロックチェーンと呼ぶ。」
出典:日本ブロックチェーン協会HP(https://jba-web.jp/news/642)
これを踏まえ、本記事では後者の「ブロックチェーン」の定義を用いることとします。
ブロックチェーンの起源はビットコインの基幹技術にあることはすでにご存じでしょう。
最近のブロックチェーンの動向は、暗号資産以外の異なる目的で活用されはじめ、その実装方式に変化が見られています。
ブロックチェーンの活用動向を紐解く際には、この技術面からアプローチすると良いでしょう。
ブロックチェーンを構成する4つの技術
まず、ブロックチェーンを構成する以下4つの技術に着目し、それらの活用分野を大まかにカテゴライズしていきます。
活用ケースによっては必ずしもこのカテゴライズにおさまるわけではありませが、各分野で特に注目されている技術にスポットを当てています。
- ブロックチェーンを構成する主な技術
・暗号化技術(ハッシュ・電子署名)
・P2Pネットワーク、分散型管理台帳
・スマートコントラクト
・コンセンサスアルゴリズム(PoW、PoS、Pol)
- 金融分野
・暗号化技術(ハッシュ・電子署名)
・P2Pネットワーク、分散型台帳
・スマートコントラクト
→ 耐改ざん性や、取引の透明性、契約の自動化(即時性)と記録などの特徴を活用
- 非金融分野
・P2Pネットワーク、分散型台帳
・スマートコントラクト
・コンセンサスアルゴリズム(PoW、PoS、Pol)
→ トレーサビリティや、取引の透明性、権利の所有・移転の自動化、記録などの特徴を活用
このように、ブロックチェーンは複数の技術の組み合わせで成り立っています。
また、これらの技術のほかにもブロックチェーンには「パブリック型」、「プライベート型」、「コンソーシアム型」の3つの種類があります。
どの型を導入するかは、ブロックチェーンの活用目的によって変わります。複数企業がブロックチェーンを活用したサービスの開発を行う場合は、コンソーシアム型を導入するケースが増えています。このあたりの詳しい議論については、今回は省略します。
それでは、「金融分野」と「非金融分野」についてもう少し詳しく見ていきましょう。
金融分野におけるブロックチェーンの活用動向
金融分野では、特に暗号化技術とスマートコントラクトによる特徴が注目されており、それらを応用したサービス事例が増えています。
具体的には決済や送金、証券取引、契約管理、資産管理、クラウドファンディングなどを目的としたサービスに適用されています。
代表事例としては、以下のサービスなどがあります。
・MasterCard: クレジットの支払い処理システムにブロックチェーンを活用。
・三菱UFJフィナンシャルグループ: デジタル証券の発行、管理プラットフォームにブロックチェーンを活用。
・日本取引所グループ: ESG投資におけるデジタル債(社債型セキュリティトークン)にブロックチェーンを活用。
非金融分野における活用動向
非金融分野では、コンセンサスアルゴリズムや分散型台帳などの技術の活用が注目されています。その理由としては、特にトレーサビリティや、取引の透明性、権利の所有・移転の自動化及び記録といったブロックチェーンの特徴は、幅広い業界へ応用できる可能性があるからでしょう。
具体的には、サプライチェーンの可視化により、小売業などにおいて流通経路や取引履歴の追跡をする時に活用されています。また、NFTなどを活用したサービス事例も増えています。
代表事例としては、以下のサービスなどがあります。
・ウォルマート: 食の安全確保のため、消費者がサプライチェーン全体の情報にアクセスし、生産者をトレースできるプラットフォームを構築。
・ルイ・ヴィトン: 製品にQRコードを取り付けることにより、サプライチェーンの可視化及び真贋証明などに活用。
・ソフトバンク: プライバシー保護の観点から、ID情報管理・認証システムとして活用
・トヨタ、デンソー: 両社の自動車部品の生産性向上のため、自動車部品のサプライチェーンを一括管理する台帳にブロックチェーンを活用。
・ソニー: 音楽制作プラットフォームにおいて、音楽の権利情報処理にブロックチェーンを活用。
ブロックチェーン活用における現状課題とエンジニアのニーズ
このように、今後ブロックチェーンは様々な業界で応用が展開されていくことでしょう。
特に非金融分野における活用の展開は特に著しく、注視して動向をチェックしていきたい分野です。
こうしたブロックチェーンの応用は広がりを見せていますが、現状ではまだ多くの課題があります。
ここでは3つの課題をピックアップします。
1、法律的課題「違法性の懸念」
2、市場規模の課題「持続的な収益維持の懸念」
3、認知度及びニーズの課題「事業のスケールの難しさ」
①法律的課題「違法性の懸念」
この課題については、これから国内でも法整備が進むことで改善されますが、おそらくまだ時間がかかると考えられます。
まずは現状の法律の範囲内でブロックチェーンを積極的に活用し、その社会的意義を証明する実績の蓄積とともに課題の抽出が必要となるのではないでしょうか。
最近では実証実験的にブロックチェーンを活用したサービスは増えてきていますが、まだ事例は少ないのが現状です。
その背景にはブロックチェーン技術者やその周りのしくみを構築するエンジニアが不足していることも課題となっています。
ブロクチェーン業界の市場は小さいものの、エンジニアに対するニーズは高く、特にWeb2.0で活躍されていた方はきっと即戦力になるでしょう。
②市場規模の課題「持続的な収益維持の懸念」
国内の市場規模がまだ小さいことは、良質なサービスを構築してもユーザーの獲得難易度が高く、継続的な収益を見込めないというケースが少なくありません。この点が事業をスケールさせにくい要因の一つとなっています。
この課題を解決するための糸口としては、まずはブロックチェーンを活用したサービスの社会的価値を浸透させることが必要となるでしょう。
そのためには、潜在的ユーザーの深い悩みやニーズに対し、ブロックチェーンの技術を使うからこそ解決できるサービスの提供が求められています。
③認知度及びニーズの課題「事業スケールの難しさ」
3つ目の課題は、②の市場規模の課題「持続的な収益維持の懸念」に深く関連した課題です。
国内では、ブロックチェーンという言葉は知っていてもそれがどんな技術で、何に活用できるのかを知らない人も多いのが現状です。その結果、ブロックチェーンを活用したサービスへの関心やニーズが限定的となり、ユーザーの獲得に苦労するというケースも少なくありません。
このソリューションとして必要なことは、まずは身近なところでブロックチェーンを活用したサービスを体験し、その価値を体感してもらうことではないでしょうか。今求められているのはそのようなブロックチェーンを活用したサービスだと感じています。
そしてその体験価値を共有し、ケーススタディを増やすことでブロックチェーンの活用意義がより多くの人に伝わっていきます。その結果、ユーザーのニーズやサービスの充実などに伴いブロックチェーン関連の市場も大きくなっていきます。
ブロックチェーン業界では②や③のような大きな課題があるため、今求められているエンジニアはブロックチェーンエンジニアだけにとどまりません。
マーケティングエンジニアや、その過程で必要なWebエンジニアなどの幅広いエンジニアのニーズが今後ますます高まっていくことでしょう。
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参考文献
本記事で使用した文献は以下になります。
- 独立行政法人 情報処理推進機構 報告書より引用【非金融分野におけるブロックチェーンの活用動向調査報告書(概要版)】の記事はこちら
- 一般社団法人 全国銀行協会 報告書より引用【ブロックチェーン技術の活用可能性と課題に関する検討会報告書-ブロックチェーン技術が銀行業務に変革をもたらす可能性を見据えて-】の記事はこちら
- 総務省公式HPより引用【情報通信白書】の記事はこちら
- 経済産業省公式HPより引用【国内外の人材流動化促進や研究成果の信頼性確保等に 向けた大学・研究機関へのブロックチェーン技術の適用 及びその標準獲得に関する調査】の記事はこちら
- 株式会社野村総合研究所 報告書より引用【最終報告書 ブロックチェーン技術の活用状況の現状に関する調査研究の請負】の記事はこちら