米地裁、リップルとSECの和解案を却下 「手続き上不適切」と判断

2025年5月16日、米国の連邦地裁は、リップル社と米証券取引委員会(SEC)が提出した和解案を「手続き上不適切」として正式に却下した。これにより、4年以上にわたる両者の法廷闘争は依然として継続される見通しとなった。
管轄権と民事訴訟規則の不備が和解案却下の決定打に
和解案は、SECがリップル社に求めていた1億2,500万ドルの罰金を5,000万ドルに減額し、差し止め命令を解除する内容だった。
しかし、アナリサ・トーレス連邦地裁判事はこの和解案について、裁判所がすでに本件に対する管轄権を失っている中で、適切な手続きを経ていない点を問題視した。
特に焦点となったのは、両者が民事訴訟規則第60条に基づく申請を行っていなかったことだ。この規則は、過去の判決を再検討するための明確な手続きを定めており、適用には「例外的状況」が必要とされている。
トーレス判事は、今回の申請がその条件を満たしておらず、規則自体への言及すらなかった点を厳しく指摘した。
また、和解案が「示唆的裁定(advisory opinion)」として扱われるべきだという主張についても、判事は明確な法的根拠が示されていないとして却下に踏み切った。
示唆的裁定は、裁判所が実質的な権限を持たない場合に非拘束的な意見を述べる手段だが、本件ではこの適用が認められなかった。
今回の判断は、SECとリップル社の間にある法的な対立が依然として終結していない現状を浮き彫りにしており、今後の対応にはさらなる法的精査が求められる。
再申請に注目 仮想通貨業界への波及効果は
今回の却下に対し、リップル社の最高法務責任者スチュアート・アルデロティ氏は、「判決がリップルの実質的勝利を揺るがすものではない」と表明した。同社が依然として戦略的な優位性を維持しているとの認識がうかがえる。
また、仮想通貨法務に詳しいフレッド・リスポリ弁護士は、「SECとリップルは、今後適切な手続きに則って再申請を行うだろう」との見解を示している。すでに裁判所の指摘点が明確である以上、両者は次の一手を練っている段階にあると考えられる。
リップル社とSECの関係は長年にわたり複雑な経緯をたどってきた。今後の動向次第では、仮想通貨規制のあり方や企業のコンプライアンス体制にも波及する可能性があるため、業界全体が注視する局面と言える。
※XRP:リップル社が開発したデジタル資産で、国際送金を効率化するためのブロックチェーン技術に基づいて運用されているトークン。価格変動が激しく、訴訟リスクによる影響を受けやすい特徴がある。