メタ、米原発の電力を20年契約 AI需要増に対応し脱炭素も推進へ

2025年6月3日、米メタ・プラットフォームズは、エネルギー大手コンステレーション・エナジーと、イリノイ州の原子力発電所から20年間にわたる電力購入契約を締結したと発表した。
AIの普及による電力需要の急増に対応する動きであり、脱炭素化戦略の一環とも位置づけられる。
AIの電力需要増を背景に、メタが米原発と長期契約
今回の契約は、コンステレーションが運営するイリノイ州の「クリントン原子力発電所」から、メタが20年にわたり電力を購入するという内容だ。供給開始は2027年半ばからで、同年に州の電力補助金が終了するタイミングに合わせた。金額などの詳細は非公開とされている。
原子力発電は、温室効果ガスを排出せず、24時間稼働可能な点から、気候変動対策と安定供給を両立できる電源として注目されている。
特に近年は、データセンターやAIモデルの運用による電力消費の急増が課題となっており、メタをはじめとするテック企業が原発の利用に舵を切り始めている。
この契約を受けて、コンステレーションはクリントン発電所の出力拡大を計画。すでに同発電所には新たな原子炉建設の連邦承認が下りており、今後の新設も視野に入れているという。
原子力回帰の兆しか AI時代の電力確保と脱炭素にらむ
AI技術の発展により、テック企業が消費する電力は今後も増加すると見込まれる。再生可能エネルギーだけではこの需要に対応しきれないとの見方から、安定供給が可能な原子力への回帰が現実味を帯びてきた。
メタのような大手企業による長期契約は、他の企業にも同様の動きを促す可能性がある。
一方で、原子力発電には高コストや廃棄物処理といった課題も残る。新設炉の建設には莫大な初期投資と長期的な運用計画が必要であり、実現までの道のりは平坦ではない。
また、地域住民の理解や規制対応も不可欠となる。
今回の契約により、コンステレーションの株価は時間外取引で一時16%上昇した。メタの株価はほぼ横ばいにとどまったが、企業としての電力調達戦略の転換は今後の脱炭素経営における重要な一手といえるだろう。