2024年の暗号資産不正取引総額、510億ドルに達する見込み

ブロックチェーン分析企業チェイナリシス・ジャパンが2025年3月18日に発表した最新のレポートによれば、2024年の暗号資産における不正取引総額は最終的に510億ドルに達する見込みである。
これは、暗号資産市場の拡大に伴い、不正行為も増加していることを示唆していると考えられる。
北朝鮮ハッカー集団による影響と詐欺手法の多様化
2024年の不正アドレスへの送金額は現時点で409億ドル(約6兆1400億円、1ドル=150円換算)に達しており、最終的には510億ドル(7兆6500億円)に達する見込みである。
しかし、全体の取引に占める不正取引の割合は0.14%にとどまっているという。この背景には、暗号資産市場全体の取引量が増加していることが挙げられる。
特に注目すべきは、北朝鮮関連のハッカー集団による窃取額が13億4000万ドル(約2000億円)に達し、前年から倍増している点である。過去には日本の取引所DMMビットコインも被害に遭ったとされる。
この増加は、国家的なサイバー攻撃の脅威が高まっていることを示している。
さらに、2025年2月21日に発生した暗号資産取引所Bybitのハッキング事件では、約15億ドル(約2200億円)相当のイーサリアムが盗まれた。
単独の事件としては2024年に北朝鮮が関与したとされる盗難被害の総額を上回る規模となった。
ロマンス詐欺も増加傾向にあり、前年比で40%の増加が報告されている。
これらの詐欺を支援する不正行為組織には、全体の約1/4にあたる108億ドル(約1兆6200億円)が流入している。詐欺を実行するための技術インフラや偽造書類などを提供しており、詐欺手法の多様化と組織化が進んでいると考えられる。
一方で、ランサムウェアへの身代金支払額は前年比で35%減少し、8億1355万ドル(約1220億円)となった。
今後の対策
チェイナリシス・ジャパン代表の内田雅彦氏は、「暗号市場の活況に伴い、攻撃者にとっての標的とユーザーにとってのリスクが増加している」と指摘している。
その上で、同社は3月26日に本レポートの詳細を解説する無料ウェビナーを開催する予定である。このウェビナーでは、暗号資産犯罪の最新動向や対策についての深い洞察が提供される見込みである。
ランサムウェア攻撃による被害額が減少したのは、被害者が身代金の支払いを拒否する傾向が強まっていることが要因とされている。ランサムウェア攻撃の抑制に向けた一歩と考えられるが、引き続き警戒は必要だろう。
今後、暗号資産市場の健全な成長を維持するためには、技術的な防御策だけでなく、規制・監視の枠組みをどのように構築するかが鍵となるだろう。