AI×地理空間情報で空き家問題に挑む、Eukaryaとマイクロベースが新ツールを公開

2025年4月14日、国内スタートアップの株式会社Eukaryaとマイクロベース株式会社は、国土交通省のオープンデータ化推進プロジェクト「Project LINKS」の一環として、自治体向けのAIツール「LINKS SOMA 空き家推定システム」を公開した。日本が直面する深刻な空き家問題への対処を目的としたこのツールは、地理空間情報とAIを組み合わせた高度な推定機能を備えており、政策立案や調査の現場に新たな可能性を提示している。

行政データを統合し空き家を可視化、AI活用で地域課題に革新をもたらす

「LINKS SOMA 空き家推定システム」は、Project LINKSの理念に則り、複雑な行政データを統合・分析するための自治体向けツールとして誕生した。住民基本台帳や水道使用量、国が整備を進める3D都市モデル「PLATEAU」の建物ポリゴンデータなどを組み合わせ、建物ごとの空き家確率を推定する。推定結果は地図やグラフとして可視化され、誰が見ても直感的に理解できるダッシュボードが用意されている。

特筆すべきは、AIが地域特性に応じて自動学習する点だ。各自治体がこれまで実施してきた空き家調査の結果を教師データとして取り込み、精度の高い空き家推定モデルを構築する。これにより、地域の実情に即した対策立案が可能になると期待される。

操作性も重要なポイントで、専門知識を持たない職員でも扱えるGUIベースのWindowsアプリとして提供されている。オフラインでも利用可能で、LGWAN（※）といった自治体専用ネットワーク環境でも問題なく稼働する設計になっている点も、公共用途に特化した配慮と言える。

※LGWAN（Local Government Wide Area Network）：自治体間や中央省庁と安全に通信を行うための閉域ネットワーク。個人情報などの取り扱いに適した高いセキュリティが特徴。

オープンソースで全国展開へ、地域再生の起点となるか

このシステムは現在、全国8エリア向けに配布が進められており、GitHub上ではソースコードと実行ファイルが公開されている。これは単なる自治体内ツールの枠を超え、広く技術的知見を共有しようとする姿勢の現れである。自治体間でのカスタマイズやノウハウの蓄積も進みやすく、持続可能なまちづくりの基盤として今後の展開が注目されている。

空き家問題は、人口減少や高齢化に伴い全国で拡大している課題である。老朽化による倒壊リスクや地域の治安低下、景観の悪化といった副次的問題も多く、的確な現状把握と対応策が急務とされてきた。今回のツール導入によって、こうした課題に対する定量的なアプローチが可能となり、行政と地域が連携した再生戦略の起点になる可能性がある。

一方で、データの整備状況やAI学習の教師データの質により、推定の精度に差が出る懸念もある。今後は、自治体間の連携強化や中央と地方のデータ共有体制の整備も課題となるだろう。それでもこの取り組みは、行政におけるデジタル活用の先行事例として、他分野への応用も期待できるポテンシャルを秘めている。

参照元：https://note.com/eukarya/n/na86b25dc41eb?utm_source=chatgpt.com