スペイン政府、AI生成コンテンツの透明性強化へ　違反企業に最大3500万ユーロの罰金

スペイン政府は2025年3月11日、人工知能（AI）によって生成されたコンテンツの適切な表示を義務付け、違反企業に多額の罰金を科す法案を承認した。本法案は、特に「ディープフェイク」の拡散を抑制し、偽情報による消費者への影響を防ぐことを目的としている。

ディープフェイク規制の必要性と法案の主要内容

AI技術の進展に伴い、ディープフェイクを活用した偽情報が急速に増加している。特に政治や経済分野では、虚偽の映像や音声が世論を操作する危険性が指摘されてきた。
スペイン政府はこの問題に対応するため、AI生成コンテンツの透明性を確保し、消費者を保護するための新たな規制を導入する。

本法案の中心となるのは、AIを利用して生成されたコンテンツの明示的な表示を義務付ける点である。これにより、消費者は視聴している情報がAIによるものかどうかを判断できるようになる。
さらに、サブリミナル技術（※）の使用も禁止されることが明記された。これにより、視聴者の意識下での行動誘導を防ぎ、不正な情報操作を抑制する狙いがある。

違反企業には厳しい罰則が科される。AI生成コンテンツの適切な表示を怠った場合、最大で3500万ユーロまたは企業の年間売上高の7％の罰金が課される可能性がある。
この措置は、違反行為を「重大な違反」として扱い、強い抑止力を持たせることを目的としている。

法案の影響と国際的な動向

スペイン政府のAI生成コンテンツに対する規制は、情報の透明性を確保し、偽情報の拡散を抑制するという点で評価に値する。
特にディープフェイク技術は、政治的なプロパガンダや詐欺行為に悪用されるリスクが高く、規制の必要性は以前から指摘されてきた。
この法案によって、消費者はコンテンツの信頼性を判断しやすくなり、メディア環境の健全化が進むと考えられる。
さらに、厳格な罰則が設けられることで、企業側も透明性確保に向けた技術的・運用的な対策を講じる動機付けとなるだろう。

本法案が議会下院で承認されれば、スペインはAI規制の分野において先進的な立場を確立することになるだろう。
特に欧州全体でAI規制の枠組みが整いつつあるなかで、スペインの取り組みがEUのAI規制法案に影響を与える可能性がある。

現在、欧州委員会ではAI法の策定が進められており、今後、スペインの法案とEUの動向がどのように整合されるかが注目される。

※サブリミナル技術：人の潜在意識に働きかけ、無意識のうちに特定の行動を促す技術。映像や音声に埋め込まれることが多く、消費者の選択に影響を与える危険性がある。