AIと戸別収集で挑む鎌倉市のごみ減量プロジェクト

2025年3月31日、神奈川県鎌倉市は、慶應義塾大学および麗澤大学の研究チームと連携して、AIセンサーを搭載したごみ収集車による実証実験を2025年4月から開始すると発表した。
​この取り組みは、戸別収集がごみ減量に与える効果をリアルタイムでデータ検証することを目的としている。​

ごみ問題の現状と鎌倉市の取り組み

日本ではごみ排出量の増加が深刻な課題となっており、特に都市部ではその処理が大きな問題となっている。​環境省のデータによれば、2020年度の家庭ごみ総排出量は約4,400万トンに達している。​

鎌倉市も例外ではなく、観光地としての特性上、観光客によるごみ増加が問題視されてきた。​これまで、定期的なごみ収集の見直しや市民への啓発活動が行われてきたが、さらなる対策が求められていた。​

このような背景のもと、鎌倉市は2025年4月から可燃ごみの戸別収集と、収集車に取り付けられたAIセンサー（※）を活用した実証実験を一部地域で開始した。​
具体的には、収集車の後部に取り付けたカメラが作業員が地域の集積場からごみを集める様子を撮影し、AIが映像からごみ袋を識別する。​このデータはネットワークを通じて送信され、地域ごとのごみ排出量がリアルタイムで可視化される仕組みだ。​収集された映像はその場で削除され、プライバシーは保護されるように設計されている。​

このプロジェクトは、戸別収集によるごみ減量効果を、リアルタイムでデータ検証することを目的としている。
​2021年に慶應義塾大学と鎌倉市が立ち上げた産学官の研究プロジェクトの一環であり、情報科学や微生物学、行動経済学などの学術分野を通じて新たな循環型社会の構築を目指している。​これにより、効率的なごみ収集体制の構築が期待されている。​
藤沢市でも同様のシステムが導入されているが、戸別収集の実施前後でデータを検証するのは鎌倉市が初めての試みである。​

※AIセンサー：人工知能を搭載したセンサーで、映像や画像を解析し、特定の物体やパターンを識別する技術。

AI技術がごみ減量に貢献する可能性と展望

本実験に際して、環境保護への期待やごみ減量への関心も高まっていると考えられる。また、戸別収集が行われることにより、現行のクリーンステーションでの負担軽減にもつながるはずだ。

​一方で、戸別収集の実現可能性には懐疑的な見方も存在するだろう。
特に、収集のコストや運用の複雑さが問題視されることが予想される。

本件が​成功するかどうかは、実証実験の結果を基にしたデータ分析と、その結果を市民にわかりやすく伝えられるかにかかっているだろう。市民の理解と協力を得るためには、啓発活動やフィードバックの仕組みを強化する必要がある。

また、観光地としての特性を持つ鎌倉市では、観光客によるごみの増加が依然として課題であるため、戸別収集だけでは根本的な解決には至らないかもしれない。 そのため、地域住民と観光業者との連携が、今後は重要になるだろう。​

鎌倉市の「AIを活用したごみ収集システム」が成功すれば、他の自治体への導入も期待されると考えられる。​今後の進展に注目したい。​