生誕100年記念企画　AI橋田壽賀子さん脚本の「渡鬼」新作がBS-TBSで5月11日に放送へ

2025年5月11日、BS-TBSは脚本家・橋田壽賀子さんの生誕100年を記念し、「AI橋田壽賀子さん企画 渡る世間は鬼ばかり 番外編」を放送する。日本のテレビドラマ史に名を刻む作家の世界を、AIの力で現代に再構築する挑戦である。

脚本家・橋田壽賀子さんの功績と、AIが紡ぐ“新たな渡鬼”への試み

1925年に生まれ、2021年に亡くなった橋田壽賀子さんは、日本のテレビドラマ界を代表する脚本家だ。
代表作である「渡る世間は鬼ばかり」は、1990年の放送開始から長年にわたり高視聴率を誇り、国民的ドラマとして知られる存在となった。
家族間の葛藤や介護、老後といった生活に根ざしたテーマを扱い、多くの視聴者の共感を呼んだことが、彼女の最大の功績と言える。

BS-TBSが発表した「AI橋田壽賀子さん企画 渡る世間は鬼ばかり 番外編」は、橋田さんの世界観を現代の技術で再構築しようという意欲的な試みだ。
番組では、過去の脚本を学習させたAIが、橋田氏の文体と価値観を再現した新たなエピソードを創出する予定であり、放送は5月11日（日）の午後6時30分から。

橋田さんの作品は、独特のセリフ回しと丁寧な人間描写に特徴がある。
これを再現するには高度な自然言語処理と脚本構成技術が求められると思われるが、AIがそれをどこまで再現可能なのかに注目が集まっている。
視聴者にとっては、懐かしさと新しさが同居する不思議な体験となることだろう。

テレビとAIの融合が示す、エンタメの未来像と視聴者の期待感

「渡る世間は鬼ばかり」の魅力は、台詞の行間に込められた感情や、どこかで見たことのあるような日常風景にある。亡くなってもなお今回のような企画が持ち上がったことからも、その作風が今なお根強く愛されていることがうかがえる。

橋田さんが生前理事長を務めていた橋田文化財団も、「『もし今も橋田先生が生きていたら、現代の家族をどう描くだろうか』という問いから（今回の企画が）生まれた」と言及しており、取り組みに意欲を見せている。

一方、AIによる脚本制作は、テレビ業界にとっても未知の領域だ。
どこまで創造的な判断をAIに任せられるのか、倫理的な観点も含めて議論が進む可能性がある。だがこの試みは、映像制作における新たな可能性を開くものだ。亡き作家の世界を後世に継承する手段として、AIという手法が選ばれた意義は大きいだろう。

AIが文化遺産の継承にどこまで寄与できるのか。その成果が、5月11日の放送で試されることになるだろう。