AIが米テック業界の新卒採用を直撃か 大手IT企業で25%減、経験者優遇の傾向強まる

米国時間2025年5月27日、米TechCrunchが伝えたSignalFireの調査によれば、AIの台頭によりアメリカのテック企業におけるエントリーレベル職の採用がすでに減少している可能性が浮上した。
特に大手IT企業では、新卒採用数が前年比で25%減少しているという。
新卒採用が急減 AIが業務代替、経験者偏重へ
米調査会社SignalFireは、LinkedIn上で追跡可能な6億人超の雇用動向を分析した結果、2024年のテック業界における新卒採用が前年より大幅に減少していることを報告した。
中でも、上位15社のビッグテック企業では新卒採用が25%減り、スタートアップにおいても11%減と明らかな減速傾向が見られる。
この傾向の背後には、生成AIの急速な普及があるとされる。
SignalFireの研究責任者アッシャー・バントック氏は、AIが新卒採用減の要因となっている「説得力のある証拠」があると述べており、AIがルーチンワークをこなす能力を持つことが、初級人材の需要低下につながっていると分析している。
特に、コーディング、デバッグ、財務リサーチ、ソフトウェア導入といった定型的な業務はAIによって自動化されやすく、これまで新卒が担ってきた役割が縮小している可能性が高い。
実際、AIスタートアップ「Rogo」の創業者ゲイブ・ステンゲル氏は、かつて投資銀行で行っていた業務のほとんどが自社AIで再現可能であるとイベントで明かしたという。
「経験なしでは職なし」時代に突入か 打開策はAI活用スキル
AIによって新卒向けの業務が減少する一方で、経験者への需要は逆に増している。
SignalFireの報告によると、ビッグテック企業は2〜5年の実務経験を持つ人材の採用を前年比で27%増加させ、スタートアップも同様に14%増と、即戦力志向が鮮明になっている。
こうした状況は、新卒にとって深刻な「経験のない者は職が得られない」というジレンマを引き起こしている。
SignalFireの人材パートナー、ヘザー・ドシャイ氏は「AIによってこのジレンマは著しく悪化している」と述べ、打開策としてAIツールの習得を推奨している。
彼女は、「AIを最も使いこなせる人であれば、AIに仕事を奪われることはありません」と強調している。
また、昨年には米ニューヨーク・タイムズが、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーといった大手投資銀行がAIの導入を背景にアナリスト職の採用数を最大2/3削減しようとしたことを報じており、金融業界でも同様のトレンドが進行中であるようだ。
今後、AIが更なる業務領域をカバーすることで、若年層にとっての「就職の入り口」が狭まり続けるリスクは否定できない。
AIと共に働くスキルをいかに早期に身につけられるかが、新卒のサバイバルを左右する時代に突入したと言えるのではないだろうか。